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ナノコスメを知る 2020年版 その2

早速ですが、前回の話題の続きに入っていきます。

自社開発リポソームはどれだけあるの?

今回は皆さんが
もっとも知りたいところに入ってきました。

OEM工場さんが弊社のように
オリジナルでこの技術を開発しているとしたら
これはユーザーさんにとっては非常に
付加価値の高いコスメが手に入るといえるでしょう。

ましてそれがコーセーさんのAQよりお安ければ
これは「買い」とオススメできそうです。

そこで、そういう工場さんがどれだけあるのでしょうか?

正直なことを申し上げて
「ほんの数社(10社以下)」と言及してしまいましょう。

ここには、きちんと理由があります。
そこを解明していこうと思いますが

最初に申し上げておきます。
その社名をさすがに私が書くわけにはいきませんし
逆にいえば
これをウリにしている工場さんの中に
エセである企業さんも分かってしまいますので
さすがにそれを書くことは許されません。

結構著名でそこそこ規模なブランドさんでもそうだったりしますので
暗闇で後ろから刺されるのはイヤですからね(笑)

とまぁ、ユーザーの皆さんでも見極めるポイントもありますので
残念がらずに、この先も少しお付き合い下さいませ。

リポソームと高圧ホモジナイザー

さて、リポソームの設計を自社で達成できた!ということになると
必ずと言って良いほどキーワードになるのが
この「高圧ホモジナイザー」という特殊な機械。

機械の製品名は色んな機種がありますが
そのメカニズムは同じで
数百キロから千キロ以上に至るまで
高圧の圧力で流体粒子同士でぶつけて壊し
ナノ微粒子に処理する機械のことです。

メカニズムはこんな感じ。

※某社製品サイトから引用させて頂いています。
著作権問題がございましたら、ご一報下さいませ。

研究室で少量を処理する実験スケールでおよそ数百万円
実際に製品の製造のスケールとなると
2千万円以上する高価で精密な機械です。

特に液体がブチあたる小さな穴の部分はこの圧力がモロにかかり
非常に硬度がある素材でないといけないため
ほとんどが合成ダイヤモンドでできていますから
ここが劣化して定期的に交換が必要という
なんともコストパフォーマンスのよろしくない機械です。

つまり、この機械を持っていることが
自社で開発して一から作っているという
条件になるというわけ。
リポソーム=ナノコスメ・・・ですからね。
いえ、厳密には「そう思い込んでいる」わけですが。

「え? ならばあんた持ってるってこと?」

いえいえ、ビンボー会社のウチが
持ってるわけもありません(苦笑)

ここは後ほど触れますが
この機械を必要とする理論さえきちんと解明すれば
実はこんなの使わなくてもリポソームは構築できます。
その理由はまたのちほど。

で、話を戻しますが
実は、資力を投じてこの機械を持ったら
それでリポソームができると
思い込んでいる企業・技術者が多いのです。

残念ながら、これは「NO!」

いや、正確には作ることはできるのですが
メカニズムと理論をきちんと知らなければ
先に書いたように化粧品として品質が安定した
製品開発が可能にならないというわけです。

それに加えて、リポソームができあがれば
コーセーさんのように乳液でもクリームでも
なんでもできちゃうと思い込んでしまっていることです。

それが簡単にできるならコーセーさんも
何十年もかけて苦労しませんよね。

残念なことに
これを購入してリポソーム技術開発を手掛けて
年月とともに甘いも吸いも知るごとに
この機械がムダな投資に終わることに
気付いていくんですね。

そう、30年前の私と
その時のOEM工場さんのように・・・(苦笑)

とまぁ、そんなわけで
こうした機械を持ってるからリポソームを自社開発している
そういうわけでもありませんし
この技術の開発スキルは研究者の問題。
この機械の有無とは無関係ですので
結論的には自社でリポソーム技術を開発しているのは
わずかな企業に限られているという次第です。

リポソームがさほど流行にならないそのわけ

私自身も今のこのナノコスメブームがなければ
開発したリポソーム技術は
全く利益の一助にもならず埋もれたままになっていたはず。
そこにはきちんと理由があって
それが「その機械の投資がムダに終わる理由」でもあります。

その理由は簡単にいえば以下のみっつです。

  1. 使用感やテクスチュアでは分からず、うたい文句にしかならないこと
  2. この技術で、乳液やクリームへの発展はできないこと
  3. リポソームは安定性がシビア

①のケースは分かりやすいと思いますが
リポソームを開発したからといって
特に「誰でもが使って分かるコスメ」にならないことです。
むしろ皮膚のインナーに入り込んでしまうため
表面の保湿性能は
わかりにくくなってしまうリスクすら持っています。

それだけでなく
リポソームは安定性を追求していくとナノサイズの粒子となるため
ほとんど見た目は透明になってしまい
見た目もフツーの化粧水や
美容液になってしまうからに他なりません。

そして、②のケースがもっともこの技術の穴ですね。
コーセーさんレベルにまで技術到達すれば
乳液程度は設計が可能ですが
普通の技術ではクリームなど絶対にできません。

答えはカンタン。
コーセーさんのリポソームの絵を見ればすぐに分かります。

リポソームカプセル

このカプセルの中には
オイル分がないことがお分かり頂けますでしょうか。
水色の部分が水と水溶性成分になります。
つまり、内包できる成分は全て水溶性だけなんですね。
ようはオイル成分は内包できないというわけです。

ここにオイル分を取り込むとするならば
膜になっている脂質二重膜の間(黄色部分)
わずかに複合させるしか手はありません。
そうでないと、この肝心かなめの
カプセル膜が壊れてしまいます。
というか、膜にすらなりません。

乳液やクリームを設計するために
これを解決しようと界面活性剤を配合して乳化すれば
この繊細なカプセル膜はカンタンに壊れてしまいますので
乳化を必要とする製剤では
リポソームを取り入れられないという理屈です。

一から医薬品業界のリポソームの理論を研究し
何が難しいのかを知らなければ
ここに行き詰まって製品への展開が
ストップしてしまうんですね。

ましてや経営者はそんなことを知る由もありませんから
「なんじゃそりゃ! たっかい機械まで買ったのに、乳液やクリームも作れないのか!!!」
となる次第。

そして最後の③のケース
もっとも四面楚歌に追い込まれる課題。

既に先に書いたように
せっかく苦労して開発できたリポソームも
その後に安定性試験を繰り返した時に初めて気付くのですが
カプセルはかなりの確率で時間とともに壊れてしまいます

そしてさらにタチの悪いことに
内包している美容成分の影響を非常に受けやすいため
その内包成分によってカプセルは簡単に壊されてしまい
一気に沈殿や浮遊物となって表れてしまう事態を招きます。

もともと、美容成分を皮膚の深部に浸透させたいがために
開発しようと試みた浸透技術の設計ですから
色んな美容成分を配合したいのがフツー。
それができないことが分かって挫折に至るわけです。

こうなるともう手がつけられず
オリジナルなリポソーム開発は
断念せざるを得なくなるというわけです。

ということで、こんな難関を乗り越えて
そして長い年月を掛けてまで苦労し
そんなリポソーム技術の開発にチカラを入れて
どれだけOEM会社として利があるか???

ぶっちゃけ
一般的なOEM工場さんであれば
全く徳にはならない技術と言って良いですね。
誰だってここでかなぐり捨てて
原料メーカーさんに作って頂いたリポソームを
活用する道を選びます。

そんなバカは私くらいのものです、ホントに(笑)

とはいえ
それでも私のところには多くのお問合せを頂きます。
それは実は
「浸透技術としての宣伝リポソーム」ではなく
付加価値の高い化粧品として
ユーザーさんが使ってはっきり分かる
「〇〇〇」があるからです。

これが何かは、安定性を極限まで追及し
それが達成できて高配合が可能になったコスメを手にしたとき
初めて見えてくる付加価値なんです。

これはさすがにノウハウに言及してしまいますので
内緒とさせて下さい。
申し訳ありません。

次回は、最後のまとめに入ります。
では、また。

by.美里 康人

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