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スキンケアコスメのテイスティング~後編

テイスティング04

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美里康人

今回は早速前回の続き
具体的な方法を伝授
慣れてくると処方設計のキモまで?

 

具体的手順

次回の続きで、早速順を追ってテイスティングを進めていきましょう。

1)テイストするための、塗布箇所を決める
 ↓ どこでも良いわけではない
2)手の平に、塗布面積に応じた適量を手にとる
 ↓ 「適量」が重要
3)塗布箇所にソっとテイストコスメを乗せる
 ↓ まだ塗り広げない
4)状態観察後、ゆっくりと塗布箇所に塗り広げていく
 ↓ パッティングはご法度
5)スっと入っていく瞬間を感じたら、パッティング
  手の平で塗布箇所の皮膚の吸い付き感を見極める
 ↓ 浸透していくタイミングと、保湿の性質・特長をよく観察
6)皮膚表面をゆっくりと撫でて、皮膚表面の状態を観察
 ↓ 滑り感・成分からくる違和感など
7)完全になじんだあと時間を置き、手の平で塗布箇所を覆って潤い感の戻りを確かめる
 ↓ 水分の蒸発の後、一度覆う事で水分が再度集められるかを確かめる
8)最後に、塗布箇所の皮膚を軽くつまんでみて、皮膚の弾力を確認する
   プニプニ感などが、角質層・インナーの潤いと関係

行程の意味すること

いかがでしょう?
かなりメンドクサイですね(笑)

でも、それぞれに意味を持っていますので、なぜこんなことをするのか解説していきます。

1)塗布箇所を決める
本来は、テイストに使用する箇所は実際のお顔がもっとも適していますが、手軽にテストできる箇所は手の甲か前腕部内側になります。
手の甲でも悪くはありませんが、皮膚の状態は前腕部がお顔と類似していますし、なにより面積が広くとれるので判定しやすいですね。

2)塗布面積に応じた適量を手にとる
テイスティングは、塗布量を正確にしないと全く参考になりません。
ここを無造作にとる方が大変多く、塗布する範囲を考慮して取り出し量は多くても半分以下にしないといけません。
クリームなどはスパチュラにほんの少し乗せる程度で適量になります。
取りすぎた場合は取りすぎた分を拭き取るくらいの配慮が必要です。

ジェルやクリームなどは、取る量が多過ぎるとポリマーカスが出たりと、お顔のケアでは起こり得ない現象を誤解してしまったりします。

3)ソっとコスメを乗せる
「ソっと」というのが重要で、乱暴にいきなりベタベタと塗り広げてしまってはいけません。
液の粘り具合や糸引き、そして中にはこの時点で分離していたりといったこともあります。

他にも、クリームなんかは盛り上がった面やせん断面のツヤ・キメの細かさも確認してみて下さい。
意外とこれが、テクスチュアにも出てきます。

ただ、以上の所感はお顔のケアに特に影響しない現象もありますので、ここで気になった現象もすぐにNGと考えてしまわないことも、重要なポイントです。
例えばネバっと糸をひくような美容液であったとしても、お顔につけてしまえば性能とは無関係ですし、使い心地が悪くないのならそういうテクスチャの製品ということになります。

4)ゆっくりと塗り広げていく
ここは特に神経質に。 パッティングはご法度です。 なぜなら、ここでパッティングで入れてしまうと、製品のなめらかさや滑り感といった特長が分からなくなってしまうためです。
浸透性や製品の延びは、ここで決まります。
塗り広げている手指の滑りがククっと止まり出すと、浸透し始めた合図。
皮膚に完全になじむまで、ゆっくりと目と手指に神経を集中させて特長を見極めます。
浸透がよくない製品ならいつまでも広範囲に広がってしまって皮膚になじみませんし、いわゆる「うわすべり現象」が確認できます。

5)入っていく瞬間を感じたら、パッティング
なじんだところで、パッティングで塗布部分の皮膚と塗布した手指との密着感やベタつきなどをよく観察します。
しばらくパッティングしているとだんだんとベタつきも減り、角質層に浸透していくかどうかもここで判断できます。
最終的に手がネチャつくかどうかといったところも、ここで見えてきます。
浸透のよくない製品であれば、塗布した手指がベタベタしますね。

6)ゆっくりと撫でて、表面の状態を観察
皮膚に残った保湿成分の性質が、ここで表れます。
ギシギシとした違和感を感じたり、お肌がなめらかになったような滑りだったり、よく観察すると面白いことが見えてきますね。

7)塗布箇所を覆って潤い感の戻りを確認
これは、ユーザーの皆さんはほとんどやったことがないかもしれませんね。
浸透性の高いコスメの場合、保湿成分が角質層の深部に入っていくことで、表面がサラサラになって物足りないような感じを受けることがよくあります。
この現象、時にはそのコスメの保湿性能が弱いのじゃないか?と、判断を誤ってしまうことにも繋がります。
つまり、表面がベタベタしてないと保湿感が薄く感じてしまうためです。

こうしてインナーに潤いをもたらしてくれるアイテムは、表面を少しの間覆ってあげることで水分を集めてきますので、しっとりとした保湿性能が分かりやすくなるというわけですね。
ただサラっとしているだけでインナーに保湿成分がしっかり届いていない製品は、ここでもしっとり感を感じられませんので、完全に保湿性能が物足りないアイテムという判定ができます。

8)皮膚を軽くつまんで、皮膚弾力を確認
この行為もあまりやられたことがないかもしれませんが、非常に重要なことが見えてきます。
7)と同様に、本当に角質層の深部、つまりインナーが潤ったかどうかは、これで確定します。
角質層の深部に保湿成分が届いたケアなら、皮膚の弾力がプニプニと柔らかくなります
インナー保湿に優れたコスメであれば、いわば赤ちゃん肌のようなプニプニ感が出てきますので、ここでその性能が判定できます。
何も塗布していない反対側の上腕部と比較してつまんでみれば、一目瞭然ですね。

テイスティング04

実は処方設計が見えてくる

以上、ちょっと面倒な行程かもしれませんが、慣れてくると表面の滑り感やヌルつき感から、ポリマーが使われているかどうかといったことも見えてきます。
時には乾いた後につっぱるような被膜感を感じたりで、その存在を感じ取ることができます。
例えばヒアルロン酸なんかは、配合量が多いと塗布時にヌルつきやつっぱり感が出やすくなりますので、「なるほど・・・」と分かるようになってきます。

他にも、保湿力をBGやグリセリンだけに頼っている製品などは、多価アルコール特有のギシギシした保湿感で、ソレと分かるテクスチュアに表れます。
ワンコインコスメならまだしも、付加価値の高い価格帯のコスメがコレでは、困りますよね。

さて、最後にもうひとつ、ユーザーさんにとっては大事な一行程があります。
それは、この後のメイクケアを追加してみること、です。

よくあるケースは、スキンケアに日焼け止めやファンデをオンしたら、ポロポロとポリマーカスが出てきた・・・という事態。
単品使いでは出なかったのに、下地やメイクを乗せたとたんに起きたというケースです。
これ、買ってしまってから分かっても、もう遅いですよね。
特にゲルアイテムや美容液・乳液・クリームに多い現象です。

あまり言いたくはありませんが、この20年ほどでこれらのアイテムはポリマー使いの処方が大半を占めるようになりましたので、ユーザーの皆さんはこんなところに気遣いをしないといけなくなってしまっているのが現状です。
必ず、ご自身で普段お使いの日焼け止めやメイクアイテムを上から塗布して確認されることをお勧めします。

* * *

ということで、2回に渡ってコスメを使用感からきちんと見極めていく手法を説明してきました。
まぁ、言うに及ばす、コスメをきちんと見極めるためにはこの程度の手順を踏まないと正確に判定できませんので、この行程を頭に入れて頂いてテイストする方の塗布の仕方をみれば、ある程度その人のスキルも見えてくる材料と言うことができます。

こちらのブログをご覧になっておられてもしもどこかでお会いすることがありましたら、くれぐれもご注意あれ。
化粧品の研究者は、コスメの塗布の仕方を結構見ているものですよ(笑)

ではまた次週。

by.美里 康人

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