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クレンジングはメイクアイテムを見極めて~その3

クレンジングの見分け方

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美里康人

今回は最終回
クレンジングの種類の特長と見分け方

今回のシリーズ、メイクによってクレンングを選ぶ見極め術の最終回は、クレンジングの種類を見分ける方法を解説していきます。

この記事の目次

まず分類

クレンジングは、いくつかのタイプに分けられることは皆さんもご承知の通り。
そして自分のお肌やメイクに合ったタイプを使い分けられていると思います。
ただ、それがどういった設計になったタイプのクレンジングなのか、全成分を見ての判断は意外とできていないかもしれません。

クレンジングオイルといった分かりやすいアイテムだとすぐに判断は可能ですが、それ以外となると意外とオイルが配合されているのかノンオイルなのかといったあたりは、判断しにくいと思います。
また、合成成分を避けたい拘りをおもちのユーザーさんになると、全成分をみて合成界面活性剤などは見分けがつきにくいかもしれません。
製品のコンセプトや謳い文句で示されていることをそのまま信じるしかないというユーザーさんもおられることでしょう。

その辺りを明確にするためにも、読み進めて頂ければと思います。
成分のラクな学びにもなると思います。

ただし最初に書いておきたいこととして、大手ブランドさんには以下の解説に該当しない製品も存在しています。
例えば、花王さんのビオレあたりには、水系のリキッドクレンジングなのに水にも溶けやすいオイルが配合されているといった処方もあります。
こうして大手ブランドさんは自社独自の原料開発が可能になりますので、以下の解説にはあてはまらない製品があれば、そこはご了承下さい。

では、まずはタイプを整理していきます。

・オイル系
クレンジングオイル
 クレンジングバーム

・水性系
リキッドクレンジング
 クレンジングジェル

・混合系
クレンジングクリーム
 オイル配合クレンジングジェル
 クレンジングミルク

これ以外にもシート状やウォータークレンジングといったカテゴリーの製品もありますが、これらはリキッドクレンジングの派生型と考えて構いません。
では早速、タイプ毎に全成分の見分け方を解説していきます。

オイル系

メイク落ちに拘れば、これに勝るものはありません。
ただ、前回までで解説したように、一部のマスカラやアイライナーに落ちにくいメイクがありますので、必ずしもオイル系が完璧というわけではありません。

2タイプありますので、それぞれに説明していきます。

クレンジングオイル

これはもう説明の必要もないと思います。
液状オイルを主体として界面活性剤が配合された洗い流しタイプと、単にオイルだけのその後に洗顔などできちんと落とさないといけないタイプがありますが、いずれも成分の3番目までに「水」が表記されていない事で判断ができますね。
ほとんどの製品は水はゼロのことが多いですが、一部に1%以下のところに水が表示されている製品があり、これも同様です。
とはいえ市場には非常に多岐に渡る製品も存在していますので、3番目までにグリセリンやBG、DPGといった水溶性成分がたくさん含まれていないか確認すれば、100%特定することができます。

クレンジングバーム

上の液状のクレンジングオイルを、固形にしたものがバームになります。
固型にするために、ワックス成分やポリエチレンが配合されていると思います。
性能や性質はクレンジングオイルと全く同じですので、カタチが異なるだけで同じアイテム群と考えて構いません。

水系

いわゆる“ノンオイル”と呼ばれるタイプのクレンジングで、オイルが全く配合されておらず、水に任意に溶ける設計になっているのが特長です。
オイル成分にトラブル(特に毛穴トラブル)を招く方は、お選びのケースが多いことでしょう。
液状のリキッドタイプ(トロミも含む)とジェルタイプがありますので、それぞれに解説していきます。

リキッドクレンジング

見分け方のもっとも分かりやすいのはオイルと逆に「水」が最初に来ていることが特長ですが、オイルが混ざっていないかどうかがポイントと感じます。
そしてもうひとつは、洗浄剤が配合された泡立つタイプと、界面活性剤でメイクを落とすタイプの2種類があります。
洗浄剤が配合されたタイプは洗い流す際に泡が立ちますので分かりやすいですね。
ただこれはあまりメイク落ちがよろしくない製品が多いので、ライトメイクやオーガニック系のメイクをお使いの方に限定されるかもしれません。
念のため、よく使われる洗浄剤をあげておきます。

・ラウラミドプロピルベタイン
 ・コカミドDEA
 ・デシルグルコシド
   etc.

そして、メイクを落とすための界面活性剤が配合されたリキッドタイプの見分け方です。
2点から見分けていきます。

①溶剤が配合されている
ほとんどのケースが、水のすぐ後ろにメイクになじませるためのこういった溶剤が使われていると思います。

 BG
 DPG
 プロパンジオール
 ペンチレングリコール
 イソペンチルジオール
 PG

②界面活性剤が配合されている

界面活性剤の見分け方のキーワードは「PEG」「ポリソルベート」です。
①に加えてこの文字がどこかにあれば、洗い流しタイプの水系クレンジングと判断できます。

よく使われている成分の一例をあげておきましょう。

 ・イソステアリン酸PEG-20グリセリル
 ・ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリル
 ・ラウリン酸PEG-9グリセリル
 ・(カプリル酸/カプリン酸)PEG-6グリセリズ
 ・PEG-8(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ

いずれも成分名に「PEG」がついていますね。 その後についている数字が異なるだけです。
ただ、これがついていない合成界面活性剤フリー(天然由来界面活性剤を使用)製品も一部に存在しています。
ここにはあげませんが、そういったリキッドクレンジングをみつけることができれば、ちょっと拘りを持った設計のクレンジングと言えるでしょうか。
PEGのついた成分がなく、「〇〇〇グリセリル〇〇」といった天然系界面活性剤が使われた製品をよく見掛けます。

クレンジングジェル

水系のクレンジングジェルは、上のリキッドクレンジングを合成ポリマーでゲルにしたものと考えれば分かりやすいですね。
必ず成分名の後ろの方に「カルボマー」「〇〇〇アクリル〇〇〇」「コポリマー」といった成分が存在すると思います。

カタチが異なるだけで、性能はリキッドクレンジングと同じと考えてよいでしょう。
とはいえ、ジェル状になっていることでお肌に物理的なストレスを与えにくいという利点があります。

混合系

オイルも配合されていて、水系のクレンジングよりもある程度クレンジング力を高めたタイプになります。 中にはよりメイク落ちを求めるために、シリコーン成分が配合されているケースもあります。

こちらもいくつかのタイプがありますので、個々に解説していきます。

クレンジングクリーム

本来ならば全成分をみて判断して頂きたいところですが、オイル成分が天然の植物油やスクワランでない製品は合成オイルが使われており、その種類も非常に多岐に渡りますので、ユーザーの皆さんが成分名からこれを見分けるのは非常に困難です。

でも、クリームか否かは製品名や中身をみれば分かりますので、ここは成分の解説はなくても大丈夫ですよね。

ただ、ここでひとつ知っておくこととして、きちんとクレンジングとしての機能を持っているクリームかどうかの判断です。
製品によっては一般的な保湿クリームとなんら変わらず、ほとんどメイクとなじまない製品も存在しています。 処方設計面でいえば、オイル成分が非常に少なくてメイクとなじむ設計になっていない処方のクリームがあります。

これを見分けるには、オイルの配合量が重要なカギになります。
全成分をみて「水よりも前に他の成分があれば、これは間違いなくクレンジング機能に優れたクリームと考えて間違いありません。
ただしちょっと分かりづらいのは「水」が一番前にきているケースで、だからといって必ずしもメイクとなじまないクリームばかりというわけではありません。

例えば、こういう配分になるケース。

1.水=40%
2.オイル=30%
3.BG(またはDPG・ソルビトールなど)=15%
4.界面活性剤=15%

以上で構成されたクリームがあったとしたら、これでもオイルは非常にリッチで、お肌の上でW/O(オイル イン ウォーター)に変化してメイクとなじんでしっかりと落としてくれます。
ということは、二番目にオイルが来ていることが条件になりますので、この見分け方はこうなります。

・水より前か、もしくは2番目に植物オイルかカタカナの成分がきていると、メイク落ちに優れたクレンジングクリーム

これでOKです。
オイル系のクレンジングと同等のメイク落ちに期待できると、考えてよいでしょう。

クレンジングミルク

これに関しては以前からブログでも書いてきている通り、きちんとメイクが落とせる製品はほとんどないと考えて良いと思います。
なぜなら、オイルの配合量がメイクを落とせるほど配合された乳液は、市販ではほとんど皆無と言えるためです。

もちろん、中にはこんなユニークな製品も存在しています。

アドライズ

リンク先:https://taisho-beauty.jp/TB/shop/g/gTB8100-06/

アドライズ アクティブクレンジングミルク(大正製薬)
<全成分>
トリエチルヘキサノイン
 ヒマワリ種子油
 
 グリセリン
 ソルビトール
 スクワラン
 イソノナン酸イソノニル
 パルミチン酸エチルヘキシル
 トリイソステアリン酸PEG-10グリセリル
 トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル
 ・・・etc

1番目も2番目もオイルが配合されてあり、他社にない非常にユニークな設計になっています。
こういった変わった設計のクレンジングミルクであれば、メイク落ち機能も優れていると想定できますね。(なぜか、公式HPからは削除されていますが・・・)
上のクリームの見極め方と同様に、こういった「水より前、もしくは2番目に植物オイルかカタカナの成分がきている」ことで見分けができると思います。

ただどうなのでしょう・・・ユーザーの皆さんがクレンジングミルクに期待するのは、“お肌に優しいクレンジング”ではないかと思うのですが、これでは単に流動性があるだけのことで、設計上ではクリームと特に変わらず、他のクレンジングアイテムよりもお肌に優しいかどうかは疑問が残りますが・・・。

オイル配合クレンジングジェル

いよいよ最後です。
このアイテムが、今回のクレンジングを見極める方法のもっとも悩ましいカテゴリーと言えるでしょうか。

普通はクレンジングジェルといえば合成ポリマーも含めて水性成分のみで設計されているのですが、“オイルも配合されたクレンジングジェル”と聞くと、メイク落ちがあまり良くないと思われがちな水性クレンジングジェルに対して、“そこそこメイク落ちに期待できるのでは?”と想像されるかと思います。

ただここは机上の空論。 現実はなかなかそうはいきません。
というのもここまで書いてきたように、水性のクレンジングはオイルフリーである代わりに、界面活性剤でメイクを落とす設計になっているのが普通です。
となると、オイル成分が配合されていたとしても、この多量に配合されている界面活性剤とオイル成分が一緒に混合されてしまい、オイルとしての性能は維持できないのが界面化学の一般論なのです。
かといって大量にオイル成分を配合するとジェル成分となじみませんので、分離してしまいます。
つまり、メイクとオイルがなじむには、オイル成分が自由なカタチでジェルの中に存在していないといけないわけです。

これはクレンジングクリームのところで解説したように、W/O(オイル イン ウォーター)にならないといけないんですね。

一例をあげるとホットで有名なクレンジングジェルで、あの製品にもオイルが少し配合されていますが、あまりメイク落ちがよろしくないとの評価が多いですね。 完全にオイル成分が界面活性剤に取り込まれてしまっていますので、メイク落ちには関与していない状態と言えます。

一応、見分け方を簡単にしておくと、成分中に以下の条件に合致する成分があればこのタイプの可能性が高いと考えて頂ければ良いと思います。

・PEGのついていない、植物油かカタカナばかりの成分名
 ・「〇〇〇〇酸〇〇〇〇」と、間に酸が挟まれた成分名

100%の確率ではありませんが、ほぼこれに該当すると思います。
例えば「トリメチルヘキサノイン」

という事で、このシリーズの最後はクレンジングを見分ける方法をまとめてみました。
頭で覚えるには少々長くなりましたが、見分け方の部分だけを切り取ってご自分なりに整理しておけば、サっと取り出してあてはまるかどうか見ていけばそれなりに活用できるかと思います。

ここにあてはまらない異端児な製品がありましたら、そこはご容赦頂ければと思います。
ではまた次週。

by.美里 康人

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