週3で異なる目線の美容記事をお届け
美里康人
現状でもっとも期待値が高いと言えるお話
2週前のブログで、ここのところちまたで大変話題となっている、美白効果に期待したビタミンCについて過去の解説をまとめ記事にしたところですが。
さすがに読むのも苦労した・・・とおっしゃる方もおられることでしょうし、せっかくなので化粧品技術者の立場なりに、今回はいきつくべきところの結論を解説してみたいと思います。
ある意味、こちらのブログにおける結論(今日現在の)と言えると思います。
この記事の目次
歴史は繰り返す
少しだけ脱線することになりますが、世の中にはたくさんの美白成分が存在している中で、結果的にビタミンCに戻ってくるのはやはりそれなりに理由や背景があると考えてよいと思います。
この話題にも随分と以前に触れましたが、それは過去の化粧品業界の歴史が示している通りです。
というのも、過去にさかのぼると数十年前には最初にコーセーさんが「コウジ酸」という、非常に美白効果に期待できる成分を配合した美白化粧品が話題となっているのですが、残念なことに試験管レベルでの細胞試験(in vitro)で陽性が認められ、発がん性や遺伝子損傷といった課題で厚労省から要観察の警告がなされて、何十年も認可が保留されるといった問題が生じています。
その後、濃度の問題や生体を用いた試験(in vivo)によってその懸念はほぼ払拭されたことから認可に至っていますが、すでに製品の販売戦略としては時既に遅しとなってしまった過去があります。
そして近年においても、カネボウさんのロドデノール問題が勃発して業界の皮膚トラブルへの警鐘となった事件にまで発展した一件は、ユーザーの皆さんもよくご承知でしょう。
これをキッカケとして、企業としても花王さんと合併せざるを得なくなった事実は、まだ記憶に新しい事件。
さらにもっといえば、美白有効性といえばハイドロキノンがすぐに成分としてあがってくるように、効果はあってもまるで漂白剤のように皮膚への影響が強く、今では皮膚科でしか処方して頂けないような強い薬剤と知られている通りです。
つまり皮膚の美白効果に期待できる成分は、どうしても皮膚の様々なところに影響を及ぼしかねない、非常にリスクを負った薬剤という性を持っていることになります。
となると、皮膚への影響が少なくて安全に使用でき、なおかつ手軽に色んな製品が選べる美白製品となると、結局はビタミンCに戻ってくるということになりますね。
もちろん、ユーザーさんにとってビタミンCは、飲む方でもカラダに良いというイメージの背景もあります。
こうして考えていくと、ビタミンCを配合した美白効果に期待する化粧品はこの先も消えていくことはないと言えるでしょうし、また近いうちに新しい誘導体成分も開発されてくることでしょう。
大前提として、これは間違いのない事実だと言えます。
回り回って再び
とはいえ、ユーザーさんというのは非常に浮気性なのも事実ですし、さらに即効的に効果が期待できる成分が出てくるのではないか?と、常に市場は流動的ですので、あれこれと他の成分に着目される市場が形成されるのもまた真実。
これは仕方のないことと言えます。
しかしながら、結果的に必ず歴史として戻ってくるのがビタミンC。
それだけ、安全に使えて期待値もまだまだ残されているということですね。
ここまで説明してくると、前の記事の歴史解説とともに思い出して頂けるのが、その当時のビタミンC事情の終着点です。
いわば、歴史の中で最善とも言える終着点は、既にエビデンスとともに示されてきています。
つまり、ここへきてビタミンCの議論が再燃されるのであれば、これをターニングポイントをしっかりと抑えた上でなされるべきというのは、間違っているでしょうか?
やはり、ここはきちんと掘り起こされるべきと思ってなりません。
ビタミンCをもっとも効率的に
というわけでまたもや前置きが過ぎましたね。
が、今回は早くも結論をお話することになるのですが、ビタミンCをもっとも効率よく効果的に皮膚内に導入するには、イオン導入といった浸透ノウハウと併用することで破格に効果があがることは、既にしっかりと証明されています。
当時も大きく話題になった、いわゆる「イオン導入美顔器」というシロモノですね。
もちろん今でも最前線で、美容皮膚科で装置を使った美白システムに使用されています。
これだけビタミンCが再燃しているにも関わらず、なぜここに着目されないのか、摩訶不思議ともいえる現象。
しかもこの浸透ノウハウは、家庭でもお手軽に使える家庭用イオン導入器にも応用されていて、お安い機械だと数千円で手に入れることができますね。
美里の言葉だけでは信用ならん・・・とおっしゃる方も、20年前にすでに広島大学の研究チームによってきちんと真皮組織にビタミンCが浸透するエビデンスの検証も公表されており、その論文をここに転載するわけにはまいりませんが、お探し頂くと今でもきちんと辿り着けます。
まぁ、そんな論文でも少しかさ増しした部分も見受けられることから、そこに記載されている「2.0~2.7倍の浸透率」はどうかとしても、しっかりと真皮層にまで届いている検証のデータにウソはないでしょう。(少なくても、製品のPR文句や理論語りよりかは・・・)
とはいえ、その当時も話題になったように、もちろんこの機械にも色々とノウハウや短所・長所があり、医療機関やエステサロンさんで使われている機械と家庭用美顔器とでは違いがあることも、また事実です。
それはイオンとしての出力と関係しているのですが、そうはいっても自宅で手軽に毎日のスキンケアに取り入れられる事実は大きなメリットですし、このデイケアでの効果でも十分な期待値があるというのは、昨今になって証明もなされています。
実は電流の出力は、0.8Ahもあれば十分過ぎるというデータもあるそうですし。
また、この20年の歴史で機器も様々な改良が加えられたり、他の超音波振動といった浸透ノウハウも盛り込まれていることから、機器も格段に進化していると考えて間違いありません。
それは大手家電メーカーもビューティ機器として市場に投入されていることからも、容易に察することができることでしょう。
既に二代目(?)となるコチラ。
■イオン美顔器 イオンブースト(panasonic社)
https://panasonic.jp/face/products/ionboost/EH-ST0A.html
いやいや、こんなの高くて買えんでしょ!
とおっしゃるムキの方でも、こうして機能を絞り込んだ機器も出ています。
■SALONIA スマートモイスチャーデバイス
https://salonia.jp/product/skin/facecare/device/
amazonあたりではさらにお安いのも出回っていますし、お財布と相談してコスパを選ぶことも可能です。
ただし、イオン導入の効果には電気メカニズムのパルス波形がどうだとか、電流値がどうとかといった機械的なノウハウがあるらしく、効果の期待値に差があるかと思いますが、ここは私は専門外なのでどれなら良くてどれなら期待値が低いのかは分かりません。
まぁ、あまりお安い製品であれこれと機能がてんこ盛りな機械は、期待値が低いのかもしれませんね。
正しい誘導体を高濃度で
さて早くも最後になりますが、こうなってくるとこうした美顔器を使うビタミンC製剤の化粧品、つまりアイテムが重要になってきます。
いわば、どのビタミンCが良いのか?
ここの結論で締めくくりたいと思いますが、いつものように私の立場では製品名を名指ししてご紹介するわけにはいきませんので、明瞭なキーワードを提示しておこうと思います。
イオン導入のメカニズムに関しては、2年前に昔の記事を洗い直してあらためて記事にまとめています。
■イオン導入で効果が期待できる成分
https://cosmetic-web.jp/column/ion/
これをお読み頂ければお分かりの通り、イオン導入で効果が増大できるビタミンC誘導体は限られています。
せっかくなの、ここで説明していなかったことも、今回は付け足しておきましょう。
まず、生のビタミンCと言われるアスコルビン酸です。
これも実はイオン化していますので浸透に期待は持てますが、もともと酸化されやすいのに加えて電気が通ることで一気に酸化が促進されますので、オススメではありません。
また、電解質は水の中でイオン化されるメカニズムから考えると、安定性を保つために水が含まれていない溶剤に溶解されてある無水の製品は向いていない可能性がありますね。
あと、油溶性ビタミンC誘導体はイオン化されません。
そして次に重要な課題は、「濃度」です。
実は当時、既に真皮層内に留まるビタミンC量も検証がなされており、エビデンスの結果から5%以上が効果的に残存するデータが得られています。
逆にあまり濃度が高くても排出されてしまいますので、コスパも踏まえて6~10%をメドにすると間違いありません。
APPSあたりは、安定性の問題から1%が最高濃度とされていますので、この手の製品は期待値が高くありません。
また、エチルアスコルビン酸も市販製品の濃度は高くありませんし、イオン化の効率もあまりよくありません。
そして忘れてはならない大切なキーワード、「医薬部外品」。
フツーは、ビタミンCや誘導体の配合量が明確にアピールされていないのなら、医薬部外品がしっかりと規定の配合量を満たしていますので、こちらを選択するのがベターということになります。
ただし、医薬部外品は配合量が決められています。
ここで初めて、医薬部外品ビタミンC誘導体の裏側を明かしてしまいましょう。
成分名はあえて正確にしていませんので、お察し頂いて読み解いて下さいませ。
・エチルアスコルビン酸
1%
・アスコルビルグルコシド
2%
・リン酸型誘導体
3%もしくは6%
こうして全て紐解いていくと、濃度の問題もユーザーさんにとって結論は見えてきますね。
これをさらに上回り、なおかつしっかりとイオン化に適している化粧品が、結構な市販製品で出回っています。
あー! 美里はいちいちめんどくさいおやぢだな!
と、気の短いユーザーさんは、さらに16年前のこちらの記事に成分名の答えがあります。
■美顔器のメカニズム~ビタミンCイオン導入(FILE No.034)
https://cosmetic-web.jp/column/mail-magazine-34/
これで判断材料は揃ったのではないでしょうか。
ではまた次週。
by.美里 康人