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ナノコスメを知る 秘話14

更新停滞で、すみません!「ナノコスメを知る 秘話13」の続きです。

化粧品に含まれる有効成分を
お肌の深部に送り届ける事が可能なリポソーム技術ですが
この『リポソーム』という言葉。

表立って商品の謳い文句として使われていなくても
ナノカプセル化」「ナノ化」「浸透技術」といった謳い文句で
今では小さな化粧品メーカーの商品PRとして
よく目にするようになりました。

でも、この『リポソーム』という言葉
なぜコーセー以外のメーカーは表立って使わないのでしょうか?

浸透性の先端技術を広報するPRツールとしては
大変有効な文言のはず。

「モイスチュアリポソーム」という販売名の商品があるから
商標か何かでヨソは使えないとか?

コーセーが特許を持っている?
いえいえ、そもそもこの言葉自体に独占権は全くありません。

でも、実はこの言葉を商品名として使用するためには
ある条件を満たさなければならないのです。
それどころか、商品のPRポイントとして広告などにも
この言葉を使ってはならない事になっています。

それはなぜかというと
「リポソーム」という言葉は
医薬品のDDSシステム技術そのものの呼び名であって
この言葉を化粧品に使用するという事は
つまりは化粧品の成分を皮膚の表皮だけでなく真皮
さらには血管を通して体内にまで導入させる
という事を意味するからです。

そう、化粧品は皮膚粘膜を超え
カラダの中まで浸透してはいけないモノなのです。

これらの理由から
商品名だけでなくPR文句にリポソームという言葉を使用するためには

1.製剤中で本当にリポソーム構造が形成されているか
また、月日が経過してもそのカプセル構造が壊れないかの証明をする事。

2.リポソームが皮膚を超えて体内にまで及ばない事(浸透が角質層で留まる)を証明する事。
以上二点の条件をクリアし
きちんとデータで証明をしなければなりません。

ちなみにこれらの証明をするには
電子顕微鏡写真や皮膚を使った臨床試験データなど
膨大な費用と年月をかけて作成して提出しなければならず
到底、中堅以下のメーカーでこれらを満たす事は
不可能なのです。

特に2点目の「浸透性の制御とその証明」に関しては
証明データの採取に大変高度な技術を要するだけでなく
それを厚生労働省の薬事審査官が
目で見て分かるカタチのデータで
証明しなければならない点が難解です。

ちなみにあのコーセーですら
モイスチュアリポソームの商品名を取得するのに
何年もの歳月を要した事からも
その困難さは容易に理解できます。

裏話として、実はあの商品
これらの理由から発売当初はリポソームの名前に許可がおりず
別の商品名だった事は密かに有名な話です。
「化粧液」の名称は
その頃の名残りと言われています。

という事で
仮にリポソームの浸透性技術を謳っているメーカーさんであっても
この言葉は安易に使えませんし
ましてや真皮や皮膚の奥にまで成分が浸透し
効果を発揮する等という文言で
商品をPRしてはならないという事です。

*

さて、ここまではリポソームという言葉に拘り
そのバックグラウンドのお話をしてきました。

でも、前回書かせて頂いたように実際の市場では
さもこの技術を応用したかのごとく商品説明をしているコスメを
頻繁に見かけます。

ここで皆さんが疑問に思うのは
コーセーでさえそれだけ苦労をしてきたにも関わらず

中堅以下のブランドで本当にそれが可能なのか?
本当にどの製剤にもそれが応用されているのか?

という点でしょう。

そこで、その謎を解明するために
化粧品業界におけるリポソーム技術の進歩と歴史を
紐解いてみましょう。

ただし、基本的にこの技術は
各社内密のうちに基礎研究が重ねられてきたため
私の知る範囲において進歩の経緯をお話していきますが
一部誤解や不足点があったとしてもご了承下さい。

続く

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