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ナノコスメを知る 秘話9

日々、化粧品開発現場で色々なことを見聞きすると
気になることがチラホラ。
それにバタバタな毎日が重なったら・・・。
ナノコスメの秘話が「下書き」のまま、
途中で放置状態になっていることに気づきました!!
びっくりするほどお待たせして、すみませんでした。

ということで、今日は、「ナノコスメを知る 秘話8」の続きです。

ナノサイズの微粒子酸化チタンが
皮膚内浸透をするかどうか

いよいよ論理的にその精査をしていきます。

まず前にお話した生体内浸透の条件
その第一段階の条件を満たしているかどうか
です。

分かりやすく一つずつみていきましょう。

1.分子量
酸化チタンの分子量は79.9ですので、ここはクリアです。

ただし、酸化チタンは金属で固体ですから
粒子が集まって集団を形成していますので
通常、その集まりを壊してやらないといけません。

例えば鉄(Fe)も分子量56ですが
鉄の塊を触ると皮膚から浸透するなんてお話は
聞いた事もないですね。

微粒子酸化チタンの場合は
それをナノレベルにまで壊していますので
ここは一応クリアされているとみて
考えておきましょうか。

お次。

2.生体親和性
酸化チタンは金属ですので
一般的には皮膚内への浸透は非常に考えにくいです。

例えば
「鉄を触ってて皮膚内に浸透してしまった。」
なんて事は聞いた事ないですね。
鉄分が皮膚から浸透するなら
ほうれん草は食べなくてもよくなります(笑)

ただし例外的に
水銀のように触れるだけで
皮膚内へ進入するモノもない訳ではありません。
ですので、ここは必ずしも「絶対」ではありません。

ただ、水銀の場合は室温で液化状態だから浸透するわけで
通常の金属は固体なので
浸透する事はあり得ないと考えるのが正論です。
ご存知のように酸化チタンは常温では固体なので
普通は浸透しないと考えるのが合理的です。

次いで

3.化学的浸透
酸化チタンは無機物なので
最初の第一原則から外れています。
そのため、この可能性は天文学的な確率で低いと言えます。

また、化学構造からみても
バリアを突破できる構造とおぼしき部分
(受動部位・アクティブな極性基)は見受けられません。
でないと、安全だと言われているミネラルファンデの顔料
酸化鉄の類いも全て進入する事になります。

最後に

4.DDS(ドラッグキャリアシステム)
当然ですが、普通に市販されているコスメの製剤に
わざわざ酸化チタンを皮膚内に浸透させようという
工夫をしたものはありません。

以上から
普通に考えると1.しかクリアできていないため
『浸透はしない』という結論が合理的です。

そしてここで私がもっとも声を大にして言いたい事は
皮膚の『免疫システム』です。

人間のカラダに物質が取り込まれるかどうかを議論する場合
経口投与(口や鼻の穴などの導入経路)に比べ
皮膚に存在する免疫システムはそんなに強くはありませんが
それでも異物進入に対する抵抗力は少なからず存在します。
つまり
『異物と感知されたモノは排出しようとするシステム』
が働くわけです。

ただでさえ皮膚の生理というのは
内から外へ代謝をしていくメカニズムになっています。
つまりは『真皮から表皮を経由して角質層への代謝』です。

ですので、基本的には外へ外へ出そうという
代謝の中で生理が行われてるという訳。
しかもその速度はターンオーバーといって
約1ヶ月というのは皆さんもよくご存知のところでしょう。

こう考えると
皮膚の免疫機能が酸化チタンを異物と感知せず
そのまま喜んで受け入れるとはとても思えないのです。

という事で私の脳内結論は
『微粒子酸化チタンは皮膚内浸透などしない。』です。

とまぁ、私レベルの化粧品技術屋が語る事ですから
真意の程は皆さんでご判断頂くとして

ナノサイズの酸化チタンが危ないと
論説を公に晒している人について
最低限この程度の理論を認識した上で精査されているかどうか
真意を推し量る材料にはなるでしょう。

色んなスキンケア理論や成分批判論評を語る方がおられますが
『日焼け止めの微粒子酸化チタンは皮膚内に浸透するでしょうか?』
『その理由は?』

この質問をする事で
その人のスキルのほどを判断できる材料になるかもしれませんね。

でも私のオススメはもっとカンタンな
『水は皮膚に浸透するでしょうか?』
という質問ですけどね(笑)

え?
メディアによく露出する著名な美容家の方々に
その質問をしてみたい、って・・・???

そんな極悪な事をしてはいけません・・・。

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