前回「化粧品作りの誤解 その1」の続きで、化粧品作りの誤解のお話です。
■Bさんのケース
酸化チタンを油に混ぜ、日焼け止めを作っています。
また、手作りのミネラルファンデにも酸化チタンを混ぜて、
日焼け対策にしています。
このケースは
ほとんど効果がないと思って間違いありません。
それどころか
場合によっては老化促進の要因に
なってしまう事すら・・・。
まず酸化チタンは
化粧品用途では、紫外線を散乱する機能を利用していますが
と同時に工業用途しては
光触媒活性が強い物質としてよく知られています。
つまり、酸化チタンは紫外線にあたる事で
急速に接触物の酸化を促進します。
これをお肌に塗布するとどうなるのか???
もちろん、お肌が酸化されてシミ・シワの要因に・・・。
市販のコスメの酸化チタンが
シリコンやシリカ・水酸化アルミなどの成分を使い
表面処理されているのは
これを防いでお肌に直接触れないようにしているからです。
さらに紫外線散乱機能について言うと
家庭で行う手作業で混ぜただけでは
酸化チタンの粒子が凝集を起こしており
本来の数十分の一しか光散乱効果を発揮できません。
化粧品に配合する場合には
その粒子の凝集をほどくために
キョーレツな分散や粉砕装置を使い
一次粒子にまで小さくします。
もちろんこれはマイクロやナノ粒子の世界なので
塊が目に見えているわけではありませんし
家庭で判断できるレベルの問題ではないのですね。
よくショップで販売されている微粒子酸化チタンを購入され
「微粒子なんだから、ナノサイズになっているはず。」
と反論をされる方がおられますが
残念ながら微粒子酸化チタンの粒子は
ひと粒ひと粒はナノサイズですが
素材単品で置いておくと粒子同士がくっつき
数十個の凝集した塊になっています。
図で説明するとこんな感じ。
この図を見ると同じ数の粒子でも
光の散乱効果に違いがありそうなのは容易に分かりますね。
また、一旦一次粒子に粉砕しておいても
このまま置いておくと再度くっつき合ってしまうため
私達化粧品工場では
タルクなどその他の顔料と一緒に分散させ
再度凝集しないように工夫を致します。
これらが紛体素材を扱う
化粧品技術のひとつです。
そして、だいたいおおまかに言うと
こうして一次粒子にまで粉砕した状態で
酸化チタン・酸化亜鉛を合わせて15%程度配合すれば
SPF値30程度が得られます。
さて、あなたが作った日焼け止めやミネラルファンデに
酸化チタン・酸化亜鉛をどの程度配合していましたか?
また、粉砕・分散していなかったとしたら
効果はその何分の一にも満たないですが、大丈夫?
日焼けは使用感やテクスチュアの問題ではなく
誤った使用は取り返しのつかない事になります。
後悔しても、シミ・シワは元に戻す事はできません。
くれぐれもご注意を。
という事で結論。
日焼け止めは手作りでは作れません。
また、手作りミネラルファンデに酸化亜鉛・酸化チタンを混ぜても
紫外線防止効果はほとんど得られません。