「美白の主役【ビタミンC】秘話04」の続きです。
新たに開発された2つのビタミンC誘導体。
■リン酸アスコルビルマグネシウム
■リン酸アスコルビルナトリウム
これを美白有効成分として製剤化し
市場投入を計画していたコーセーさんをはじめ
私達研究者の頭をここで悩ませたのは
『水に溶けている状態での安定性と溶解性』
そしてもう一つが
『塩が製剤の邪魔をする問題』
です。
どういう事かというと
1.水に溶けにくいためにあまり濃度を濃くできない。
2.水に溶けた状態では分解しやすくなる。
3.「塩」という性質のために、高濃度では乳化物が不安定になる等、化粧品の製剤化の邪魔をする。
この3つの問題が
大きく商品化の前に立ちはだかったのです。
ビタミンCが
美白有効成分として有効に機能するためには
必ず濃度の高さが
キーポイントとなります。
ところが濃度を濃くすると
以下のような問題に悩まされるというわけです。
1.水に溶けにくい性質から、時間とともに結晶が析出してくる。
2.pHの影響、そして金属・酸素の存在とが複雑に絡み合い
製剤中で分解を始めて品質が変化を起こしてしまう。
3.乳液やクリームといったスキンケアアイテムは
塩の影響で分離や低粘度化が起こり、応用が難しい。
これらの難問に立ち向かった技術陣は
多々あったようですが
商品となった時のリスクがあまりに大きいために
大手メーカーの研究者は
早々に方向転換を強いられました。
一方、初期段階から開発に着手していた
大手メーカーの中では
唯一コーセーだけは
なんとか商品化にこじつけましたが
これが後々、大手ブランドの中で
唯一固有の美白素材を持たない
孤立した状態になるハメとなります。
そう
今でもコーセーだけが
独自の美白成分を持たないのは
この影響によるものが大きいと
言われています。
ちなみに
アルビオンを中心に
コウジ酸を独自の美白成分として採用はしましたが
後に危険性の問題がクローズアップされ
行政指導として使用が制限されてしまった一件は
皆さんの記憶にも新しい事でしょう。
* * *
さて
ではビタミンCの製剤化への道は
これで絶たれてしまったのでしょうか?
いえ、人間が持つほかの分解酵素を
利用する道を探る研究も
一方では進められていたのです。
ここに皆さんもよく知るところの
最大手メーカーがいよいよ関わってきます。
以下、次回へ。