美顔器として広まったイオン導入。
そのメカニズムと効果のある製品は?
まずはイオン導入のメカニズムを復習
皆さんも一度は耳にしたことのあるでしょう、イオン導入という言葉。
エステサロンさんで試した事のある方、はたまた家庭用を購入されたお使いの方もいらっしゃるかと思います。
あらためてということになるのですが、今回はイオン導入の原理と、そして使うべき導入液を見直すヒントになる記事を書いてみたいと思います。。
既に皆さんもご存じの通り、イオン導入とは導入液を皮膚に塗布し、微弱電流を流すことで美容成分を皮膚内に浸透させたり、はたまた不要な老廃物を排出したりといった効果を有する美顔器です。
ですので、プローブと呼ばれる機械の先端部分からは、電気が発せられるというメカニズムです。
機器には-の電流だけを流すものと、+の電流の両方とを切り替えられる構造になったものがあります。
で、何かを浸透させたい場合は、その電流と同じイオンになる成分を接触させてあげれば磁石のように反発し、離れようとするために皮膚の中に逃げるように浸透していくというわけですね。
また、皮膚や毛穴の内部にある余計なモノを排除したい場合は、反対の電流を流してあげればプローブの方に引き寄せられて皮膚から離れることになります。
皮膚や毛穴内部の老廃物や汚れは、基本的に-の電荷(イオン)を持っていると言われていますので、+の電流を皮膚に流してあげればそういった物質はブローブにくっついて排出されるんですね。
一方、皮膚の内部に浸透させたい場合です。
これも同じメカニズムで、導入液の中に-の電荷(イオン)を持つ成分が配合されていると、-の電流を流してあげると反発して皮膚の内部に入っていこうとしますので、この原理を応用しています。
イメージしやすいように図にしてみました。
ここで疑問が生じることでしょう。
「ほとんどの美顔器は、-の電気を流して成分を導入すると説明されているけれど、なぜ?」
なぜ「導入は-」しかないの?
この疑問を持たれた方も多いことでしょう。
確かに、必ずと言って良いほど
「導入の時は-、排出の時は+」
となっていますね。
まぁ、上で既に書いたように、汚れといった老廃物は-にイオン化していますので、同然のことながら+の電流を流してプローブにくっつけてあげなければならないのは簡単に理解できるでしょう。
しかし、導入する方は-の電気を流した時は-のイオンをもつ美容成分が導入でき、+の電流を流せば+のイオンを持つ成分が導入されるでしょうから、どっちの性質の成分でも良いように思いますよね?
成分によって使い分ければ良いのでは?と。
なぜ+(プラス)の成分を導入させない?
この理屈はその通りなのですが、実は+にイオン化する成分はお肌に良い成分が存在しないから、なんです。
もっといえば、+イオンを持つ成分はむしろ皮膚に導入したくないものばかりだからですね。
皆さんが身近に知るものでは、髪のコンディショナーに使われているカチオン活性剤もコレです。
※+イオンは化学の世界ではカチオンと呼び、-イオンはアニオンです。
成分の+の部分に髪の-イオンとくっついて吸着してくれるため、髪にすべりやくし通りを与えてくれる成分です。
しかしながら、これがお肌に合わず頭皮にかゆみが出たりフケの原因になったりと、皮膚トラブルの要因になりやすのもこの成分ですね。
他には、殺菌剤の多くもカチオン成分です。
というわけで、お肌に導入したいのは-にイオン化する美容成分しかありませんので、「導入は-」になっています。
ここまで、メカニズムのお話をしてきました。
では、このイオン導入に使って効果のある導入液のお話に入りましょう。
効果が期待できる導入液
機器を販売しているメーカーさんや、イオン導入液を販売しているメーカーさんは、色んな成分が導入できるように謳われていることが多いですね。
たくさん売りたいでしょうし、他社製品と差別化するために宣伝されることでしょう。
メーカーさんによってはこの機器のメカニズムをよくご存じでなく、「え?」という広告もよく散見されます。
メカニズムへの知識の浅い化粧品メーカーさんならまだしも、プロのエステサロンさんで間違ったことを宣伝されていると、かなりガッカリします・・・苦笑
では、見極めのポイントを明確にしておきましょう。
よく理解しておいて下さいね。
上で書いたように、この美顔器のメカニズムはシンプルですので
「-にイオン化する成分しか導入できません」
つまり、イオン化しない成分、そして+にイオン化する成分は無意味ということになります。
皆さんは製品やHPなどに記載されている全成分からしか判断できませんので、これでは分かりにくいでしょうか。
では分かりやすい答えを。
「-にイオン化する成分は水溶性成分のみで、最後にKやNaがついている成分」
つまりK(カリウム)やNa(ナトリウム)は化学的に+を持つ物質ですので、水の中では-にイオン化するためです。
全成分に記載されている成分名では、必ず成分名の最後にこの「K」や「Na」がついているので分かりやすいと思います。
実は実際には、他にもMg(マグネシウム)やCa(カルシウム)、そしてNH(アミン)なども存在はするのですが、いずれも水にはほとんど溶けなかったり、今のところお肌に良い美容成分の中には存在しませんので、この二つに限定してしまってほぼ間違いありません。
もっと分かりやすく!
え?
まだ分かりにくいですか?
う~ん・・・基本的に女性はめんどくさがりですからねぇ・・・(笑)
ではもう言い切ってしまいましょう。
「ビタミンC誘導体だけ」
これでいかがでしょう?
いえいえ、ウソは書きません。
水溶性ビタミンC誘導体はほとんどの成分が、KやNaがついているからです。
もちろん全てではなく、例外もあります。
「3-O-エチルアスコルビン酸」
「アスコルビルグルコシド」
「~グリセリルアスコルビン酸~」
現在市場にあるVC誘導体では、この3種類はイオン導入に向いていません。
他にも、保湿成分で有名な「ヒアルロン酸Na」もあるじゃないか!という声が聞こえてきそうですが。
でもヒアルロン酸そのものは分子がめちゃくちゃ大き過ぎ、もともと皮膚内に浸透しませんので無意味なんですね。
これをお読みなってあちこちのイオン導入液を見て頂ければ、まず間違いなく「ビタミンCの導入」という文字が踊っているはずです。
それ以外の成分が書かれてあっても意味はないと思って頂ければ良いということですね。
つまりこの美顔器は、ビタミンC誘導体の皮膚内導入のために開発された機械というわけでした。
ただ、ここで少し異例なケースをご説明しておかないといけません。
最近よく目にするケースで、「トラネキサム酸」を含む「アミノ酸」をイオン導入するというPRを見かけることがあると思います。
ならばこれは間違っているのでしょうか?
これは実は、まんざら間違いとは言えない一面を持っています。
それでもここで導入液としてオススメしていないのには理由があり、それは「製剤によって必ずしもどちらとも言えないため」です。
トラネキサム酸やアミノ酸は電荷を持っていますが、pHによって電荷が変化する等電点という性質を持っています。
つまり酸性側の時と中性の時、そしてアルカリ側の時と電荷が変わりますので、それぞれの製品のpH状態によって変わってくることになるというわけです。
ですので、効果が期待できるかどうかはそれぞれの製品によるということになりますので、ここは判断のしようがありませんし、もっと言えば化粧品の設計はほとんどが中性域に調整されていますので、ほとんどの場合は電荷を持っていない状態であると推測できるんですね。
もちろん、資生堂ナビジョンさんのようにトラネキサム酸が電荷を持つようにpHをしっかりコントロールしてあり、なおかつ皮膚科の先生が+-の電荷をしっかりと見極めて施術して効果を高めるノウハウを駆使している場合もあります。
以上、イオン導入のメカニズムと浸透が期待できる成分のお話をしてきました。
ただし、今では美顔器も進化し、超音波やLEDといった異なる浸透メカニズムの機能も盛り込まれた美顔器がほとんどとなっています。
超音波などは物理的メカニズムによって皮膚組織を緩め、その隙間から成分を浸透させていく機構を盛り込んでいますので、分子の少々大きなものも含め様々な成分の浸透が期待されるよう設計されています。
その辺りも含め、メカニズムを理解した上で機器と使用美容液の選定をしたいですね。
もしも私の知識が足りずに、導入液で「K」や「Na」がついている他の成分が導入されるといったことが謳われている製品を見かけましたら、ご一報下さい。
調査致しますので。
では今回はここまで。
ではでは。
by.美里 康人