無添加成分の考え方について
以前にも記事にしていますが
今回は法的な規制も明確にし
成分の解説もまとめておきます
法的な広告の規制
「◯◯フリー」の話題については以前にも取り上げていますが、今回は法の規制も含め、メーカーさんが明記している表現の意味なども説明していこうと思います。
実例の解説まであげると結構長くなりますので、2回に渡って説明していこうと思います。
まずは法律上の問題です。
昔はこういった無添加表示に対して規制を受けることはありませんでしたが、主に防腐剤・香料がお肌によろしくないという風評が広まったことでPRツールのひとつとして使われることが販促の世界で流行し、法的な規制が設けられることになります。
ちょっと真面目な話になりますが、具体的なこの法律とは「公正取引委員会」が承認した「化粧品公正取引協議会」という任意団体で取り決めされた「公正競争規約」の中で、規定されています。
全文を転記しておきましょう。
〈以下、引用〉
「無添加」、「無配合」、「不使用」等ある種の成分を配合していないことを意味する 用語を表示する場合は、何を配合していないかを明示して下記の基準により使用する。
ある種の成分を配合していないことを表示する場合は、当該成分名称を併記する。
例)
パラベン無添加
ノンエタノール
ある種の成分群に属する成分すべてを配合していないことを表示する場合は、当該成分群を併記する。
例)
タール色素不使用
紫外線吸収剤無配合
オイルフリー
着色剤、防腐剤等を配合していないことを表示する場合は、防腐剤等配合目的を併記する。ただし、規約第4条第7号の規定に基づく指定成分の表示名称により、当該成分の配合目的について一般消費者に誤認されるおそれがある場合には防腐剤無添加等と表示することができない。
例)
着色剤無添加
防腐剤カット
無香料
注)1
タール色素、紫外線吸収剤及び防腐剤として配合される成分は、医薬品医療機器等法に定めるポジテブリストにそれぞれ収載されている成分をいう。
注)2
オイルとは、植物性油、動物性油及び鉱物油をいう。
〈引用、ここまで〉
一方、薬機法でも「医薬品等適正広告基準」のところで、解説と留意事項として以下のように厚生省薬務局長から告知文が出ています。
〈以下、引用〉
化粧品及び薬用化粧品において、「肌のトラブルの原因になりがちな指定成分・香料を含有していない。」等の表現は不正確であり、また、それらの成分を含有する製品のひぼうにつながるおそれもあるので、「指定成分、香料を含有していない。」旨の広告にとどめ、「100%無添加」「100%ピュア」等のごとく必要以上に強調しないこと。
〈引用、ここまで〉
非常に曖昧で、解釈の仕方で逃げ道がたんまりあるので、公正競争規約の方で具現化されたというわけです。
以前にも書いたように、ようは簡単に言えば「具体的に何を配合していないのか、消費者が分かるよう明確に示しなさい」ということですね。
実際の広告をみていこう
以上で明確にされていますので、はい今回は終わり~という感じですが、消費者の皆さんにとっては分かりづらい実例もありますよね。
では、続いてそんな部分を解説していきましょう。
まず、「配合していない」という言葉は色んな文言に言い替えられています。
ピックアップすると
・無◯◯
・◯◯フリー
・◯◯未使用
・◯◯無添加
・◯◯不使用
などがあり、いずれも同じ意味です。
再度念を押しますが、法律ではこの◯◯で明確に成分要素を示さないといけません。
一例)パラベン不使用
では次に、この◯◯のところが、消費者さんには分かりにくい言葉が使われていることに触れましょう。
何種類あるのか
さてこの◯◯の部分、意味が分からないことも多いかと思います。
またこの部分は法的に決められているわけではないので、種類も多岐に渡っているのが現状です。
まずはどんなのがあるのか実例をあげてみましょう。
・香料
・合成香料
・防腐剤
・パラベン、フェノキシエタール
・鉱物油
・合成成分
・合成界面活性剤
・酸化防止剤
・アルコール
・エタノール
・着色料(剤)
・オイル
・表示指定成分
・石油系原料
・タール色素
・紫外線吸収剤
ここまででもすでに16個です。
まぁ、重複しているのもありますので、それでも軽く10種類はありますね。
ちなみに実際に私が経験した例で、メーカーさんから「できるだけたくさんの数をあげたいので、最低でも10個あげて下さい」なんて依頼もあります。
つまり、ここに法的な規定がないのを良いことに、「なんと10種の無添加!」などと謳いこみたいということですね。
私達のお客様はメーカーさんなので、ユーザーさんにとって有益とは思えず、苦虫をかみつぶしながらもこじつけて考えて数を揃えることもあるんですね(苦笑)
そういう意味ではまだ他にもこじつけで羅列したモノもあるかと思いますので、不可解な記述をみられたらぜひともご報告下さいね。
ブログ記事でとりあげさせて頂きますので。
言葉の意味を知ろう
ここまではこれまでの復習ということで、次はこうしてあちこちで使われている言葉の、意味を解説していきましょう。
で、その前にクイズです。
実は上で実際に使われている列記した言葉には、法的に間違っているものが含まれています。
それはいったいどれでしょう?
ヒントは、「成分を明確に」という法律の解釈です。
ひとつ答えを明かせば「防腐剤」です。
これ、皆さんは普通に見る言葉で、とても間違いとは思えないですよね?
ところが、食品と違って化粧品の場合は、防腐剤の代わりとして使える成分はたくさんあるんです。
*一応、薬機法上で定められた防腐剤の定義はあります
つまり、パラベンやフェノキシエタールといった一般的に知られる成分以外の防腐剤もありますので、こういったよく見掛ける防腐剤の名前がないだけで防腐剤がない化粧品と消費者に思わせてしまうことがダメだということで、より具体的に明記するよう規定されています。
なので、この場合は次に列記してある
「パラベン、フェノキシエタール不使用」
が正解です。
他にも間違った言葉がありますので、次回までに探してみて下さいね。
ちなみに、今では防腐剤としてこんな成分もありますので、参考にして下さい。
・ペンチレングリコール
・1,2-ヘキサンジオール
・カプリリルグリコール
・エチルヘキシルグリセリン
・プロパンジオール
いずれもよくメーカーさんの成分説明では「保湿成分」とされていますが、実際上は防腐剤として配合されています。
これらの防腐成分の良し悪しには触れませんが、普通に保湿剤ではないことだけは間違いありません。
ちなみに「BG」や「DPG」も、保湿剤じゃなく防腐剤だと主張される方もおられますが、確かにまんざらこれはウソではありません。
ただ、これを論じる方は無条件で「この人、シロート」と認定して頂いて構いません。
なぜなら、この二つだけで化粧品の防腐剤として効果を発揮させるとしたならば、効果が弱いので少なくとも30%以上は配合しないと防腐効果が達成できないことを、私達技術屋は当たり前のこととして知っているからです。
そしてこの配合量で作られた化粧品は、とてもじゃないですが使用感の良い製品にならないことをよく知っていますので、絶対に実際にやることはないんですね。
つまり、現実性がないから、です。
なので、よく防腐剤の補助としては利用しますが、目的はあくまでも保湿成分。
これだけで防腐剤にすることは、よほどチープなブランドでもない限りあり得ません。
実際に化粧品の製剤を少しでも手掛けたことがある人ならば、こんな酔狂な理屈を論じることはないですね。
さて、次回はクイズの答えと、それぞれの語句の解説に入っていきます。
では、また。
by.美里 康人