今回は前回の続き
「〇〇フリー」の〇〇が
意味が分からないものも多いですね
今回はその解説
まずはクイズの答え
前回、以下のような〇〇が語句によく使用されていると例をあげましたが、これには法的に間違いがあるとクイズにしてみました。
・香料
・合成香料
・防腐剤
・パラベン、フェノキシエタール
・鉱物油
・合成成分
・合成界面活性剤
・酸化防止剤
・アルコール
・エタノール
・着色料(剤)
・オイル
・表示指定成分
・石油系原料
・タール色素
・紫外線吸収剤
全部お分かりになりましたでしょうか?
では早速その答えです。
正解の一例に「防腐剤」を上げましたが、これはカンタンで防腐剤という言葉は曖昧で消費者の皆さんは分かりませんので、具体的に「パラベン」や「フェノキシエタノール」と表さないといけません。
もちろん、その他に前回あげたような防腐剤の役目をはたしている成分があり、それを明記しても構いません。
そんなメーカーさんはまずないでしょうけれど(苦笑)
で、その他の正解です。
もう〇✕でやっちゃいましょう。
〇香料
〇合成香料
〇鉱物油
✕合成成分
✕合成界面活性剤
〇酸化防止剤
✕アルコール
〇エタノール
✕着色料(剤)
△オイル
〇表示指定成分
〇石油系原料
〇タール色素
〇紫外線吸収剤
以上ですが、いかがでしたでしょう?
ん?おかしくないか?
はい、きっと
「いやいや、よく見るぞ! ほんとに間違い?」
とおっしゃる方も多いことでしょう。
そう、中には✕なのによく見かける言葉もあります。
具体的にあげていくと、「合成界面活性剤」「着色料」「オイル」でしょうね。
ではなぜ✕にしているか説明していきます。
これらには「厳密にいえば」といった、ちょっと曖昧な意味合いの含みがあります。
分かりやすい例えをあげますと
「オイルフリーのリキッドクレンジング」
これ、例えば花王さんのビオレなんかは、オイルとも水性成分とも言い切れない中間的な合成オイルが使われていたりします。
するとそれはオイルと考えて良いのかは、判断が分かれるところになります。
というかそれだけでなく、この言葉の表現は商品の方向性や性質を言い表しているだけのことであって、「オイル未配合」と配合成分の有無を明示しているのとは微妙に異なると判断されます。
ですので、これにまでおよんで広告表記として違法と摘発されることはありません。
ですので、本来の法律上は具体的にどういったオイルか使われていないのか明示して書くべきことなので、一応NGワードとしています。
例えば正しくは、「合成オイル」「動物油」などですね。
そういう意味では、同様に「合成界面活性剤」もこれにあたります。
つまり、「合成界面活性剤とは?」と問われても明確なものさしがありません。
なので、本来はNGなんです。
ところが、明確なボーダータインがないために、逆に摘発もされにくいという一面を持っています。
指摘を受けても、逆に「じゃ、具体的に書きたいので合成界面活性剤とはどれを指すんですか?」と聞きかえされれば、消費者庁のお偉いさんだって答えられないからです。
なので、特に摘発対象としてうるさいわけではなく、みんな使っているというわけです。
具体例をあげると
「PEG-60水添ヒマシ油」
PEG-60がついているので、これは石油由来のエチレンガスの重合体。
ならばどう考えても合成と言えます。
ところが、一方の疎水基側にはヒマシ油がベースになっていますので、これは天然のオイル。
いわば、物質構造の半分は石油由来の化学合成、半分は天然油由来の素材ということになります。
さぁ、どっちなんだ!
誰も答えられませんので、それぞれのメーカーさんによってコンセプトとして考えれば良いだけのことで、ブランドによってはこれは合成とされているところもありますし、ズル賢く天然由来としている場合もあります。
これまでもユーザーの皆さんにブランド見極め術のお話をする時に、判断基準をよくお話してきました。
その際に重要な判断基準として
「そこが、メーカーさんの誠意の表れ」と。
つまりは、違法ではなくてもユーザーさんのことを思いやり、「疑わしきは使わない」ポリシーでブランド設計されているのが、企業としての誠意だと言えるわけですね。
どっちともとれるのをズル賢く利用するような企業さんは、それなりと判断されてはいかがでしょうかと、アドバイスさせて頂いています。
話は戻りますが、そういう意味では「着色料」も同じで、化粧品に着色する素材は合成だけでなく天然由来のものもあれば、もっといえば油溶性甘草エキスのように色がついてしまう植物エキスもあります。
ですので、どれが着色剤か?と問われれば誰も答えられないので、本来はNGのはずなのですが、誰も答えられないのでユーザーさんどころか消費者庁も分からないと・・・。
「カラメルを入れてるんだけど、これは着色剤になるのか?」と消費者庁の偉いさんに食ってかかれば、「えっと・・・それは・・・」となるからですね。
なので普通によく使われていますが、本来は一覧にある「タール色素」や「合成着色料」といった記述にしないといけません。
というわけで「オイル」も、本来は具体的に「合成油」といった記述にすべきなのですね。
完全なNGはこれ
そんな中でも、完全にアウトな書き方も含まれています。
「合成成分」
これは何をもって合成というか曖昧過ぎますので、全くのNGです。
例えば微生物が生産する成分は、バイオ合成という言葉を使います。
微生物は、色んな物質を変化させて排泄する性質を持っているためです。
もっといえば以前に取り上げたように、「スクワラン」だって厳密にいえば合成油です
本当にサメから採取された天然のオイルは「スクワレン」であって、これに水素を反応させて酸化しないように安定化させたものがスクワランですから、これも化学合成のひとつです。
そしてもうひとつの完全アウトな言葉は、「アルコール」。
これ、意外に思われた方が多いかもしれませんね。
一部には、この言葉を使っている成分知識の浅いメーカーさんも見受けます。
なぜかといえば、本来メーカーさんが書きたいのは「エタノール」(エチルアルコール)のはずで、こう書かないといけません。
なぜなら、他にも化粧品によく使われるたくさんの種類の高級アルコールがあるからです。
いえ、誤解なく。
「高級な」アルコールではないですよ。
ここ、ご存じない方は「高級アルコール」で検索して、解説した過去記事を拾ってお読み頂ければと思います。
〇だけど意味が分からない成分
さて、〇印はついているけれども、ユーザーの皆さんには意味がよく分からないものもありましたね。
まずは「香料」。
これは、化粧品の表示名称に「香料と表記すべき規定」があるので、これに該当するものは香料となりますので、実ははっきりしているからです。
ここで言う香料とは、つまり「合成香料」のことです。
逆に言うと、天然から得た精油(エッセンシャルオイル)は香料と明記しなくても良いということですね。
なのでものさしが明確ですから、〇というわけです。
ただし、ここで実は例外があります。
最近は、化粧品の成分として表示名称が個別に与えられた単体の合成香料があります。
例をひとつあげると、「リモネン」。
これは本来、レモンの香りを演出する合成香料なのですが、表示名称として個別に成分名が与えられましたので、これは「香料」と明記せずに「リモネン」と表示します。
「え? ならば、これって合成香料が使われた製品じゃんか!」
苦情が出そうですねぇ・・・。
あたしゃ知りません、そこまでは(苦笑)
他にもたくさんありますが、日々増えていますしあげているとキリがないのでやめておきます。
次は「鉱物油」です。
これは実は明確なのですが、意外とユーザーさんには知られていない成分名がありますので、非常にビミョーな表現かもしれません。
オーソドックスな成分は、「ミネラルオイル」と「ワセリン」。
でも、これだけではありません。
「パラフィン」もこれに該当します。
いわばミネラルオイルの固形版といったところですが、ロウソクのロウがこれです。
まぁ、いずれにしてもこの3つで全てですので、覚えておけばよいですね。
次いで「酸化防止剤」。
これはかなり怪しいと言わねばなりません。
単純に覚えておくのであれば、「トコフェロール」一点絞りで良いんです。
他にもあるのですが、もうほとんど使われなくなっていますので。
しかしですね、これって時に「オイオイ」という事態に出くわすことがあります。
というのも、今やほとんどの化粧品会社は、このトコフェロールには「天然ビタミンE」を使うからです。
文字通り、これってビタミン類の一種ですので、時にこれを「天然ビタミンE配合」なんて、訴求成分にあげられていることもあります。
「え? なのに酸化防止剤不使用?」
まだこれはマシな方。
ご存じの方もおられるかと思いますが、実は「ビタミンC」(誘導体含む)も化粧品の配合目的として認められているのは、酸化防止剤なんです。
さすがにビタミンCが配合された化粧品を酸化防止剤不使用と明記するのは、反則と言わねばなりません。
百歩譲って、1%以下の微量配合の化粧品であればもってのほか、ですね。
続いては、「表示指定成分」
これは20年前まで業界で制定されていた成分表示の制度で、お肌にリスクが想定される成分を表示する義務があり、これを「表示指定成分」と呼んでいました。
103種類の成分がリストアップされ、パラベンや香料、タール色紙などが含まれていました。
今はもう厚労省の告知は削除されていますので、リストをお調べになりたい方はこちらのリンクをどうぞ。
「石けん百貨株式会社」さんのHPでまとめられています。
■読んで美に効く基礎知識
http://cosme-science.jp/words/ka/post-167.html
そして次は「タール色素」
これは、単純に「〇色〇〇〇号」といった番号がつけられた合成色素のことと覚えておけばほぼ間違いありません。
最後が「紫外線吸収剤」ですが、これは以前の記事で書いていますので、こちらを参考にされて下さい。
メーカーさんの傾向
最後に余談にはなりますが、ユーザーの皆さんの参考になるお話に少し触れておきましょう。
上でも書いたように、実は法的に明確なボーダーラインはごく一部の明記のみで、全体としては「消費者に分かるように」という基準が設けられているだけで、明瞭に〇〇はOK、〇〇はNGと一覧なりリストがあるわけではありません。
いわば、明らかにNGとされている語句以外は、メーカーさんの判断と誠意に任されています。
となると、当然メーカーさんによって基準は異なりますので、それは誠意がないと思われるアピールの仕方もまかり通っています。
例えばほとんどの化粧品に配合されている「BG」。
これって今のところは、石油由来の合成原料なんですね。
この成分が含まれていない化粧品はほぼ皆無に近いはずなのですが、「石油由来成分無添加」という言葉がまかり通っています。
もちろん、「合成」という言葉も同じです。
このBGまでも配合を避けて「天然由来原料のみで作りました」という誠意あるメーカーさんは、かなりレアだと思います。
ということで、現状はこんな感じです。
ちなみに私達ももちろん、メーカーさんに製品をご提供する際には、よくこのフリーコンセプトを謳いたいので何をフリーに指定すれば良いか、よく打ち合わせになります。
当然、「それはメーカーさんである御社でボーダーラインをお決めになられるのが原則です。」と原則論のお話をしますが、参考までに私達OEM企業としてのポリシーは提案させて頂いています。
私達のポリシーは、例えば界面活性剤のように、例え一部に天然由来の素材が使われていても、石油由来の素材部分がついていればそれは「天然由来とは判断しない」というボーダーラインを設定しています。
逆に言えば、天然由来という限りは、石油由来素材は一切含んでいないことを原則として開発を心がけています。
こうして、わざわざ多大な開発経費と人件費を掛けてこういう方針で取り組んでいるのには、明確な理由があります。
それは
「試作品のやりとりの途中でフリーコンセプトを要望されると、処方設計が一からやり直しになるから」
ですね。
長年のOEM開発事案の経験則から、そんな事態が何度もあったためです。
例えば防腐剤なんかも、防腐系を変えるとなるとベースの設計から大きく変わってしまい、もちろん使用感も変わってしまうんですね。
乳液やクリームの界面活性剤なんかは、もう最悪です。
サラリーマン時代には、営業の方が安直に受けてきた要望に対して
「ここまできて今頃そんな事言うなよっ!! お前がやってみろ!」
なんて、研究室内でよくブチ切れたもんです(苦笑)
以上ですが、思い出しながら書いたので、まだ書き足りないものがあるかもしれません。その節はご容赦頂き、遠慮なくコメント欄に苦情を寄せて頂ければと思います。
さて、いよいよ明日から展示会でのセミナーです。
ツイートでも書いた通り、ユーザーさんにとってはもうひとつピンと来ない内容かもしれませんが、メーカーさん・ブランドさんにとっては非常に興味ある業界改革技術の内容になっています。
数年後には、合成ポリマーや界面活性剤が配合された乳液・クリームが、世の中から消えるかもしれませんね。
いえ、少なくとも高付加価値価格帯のコスメであれば、もうそんなのを使う時代ではないと私は思うわけです。
業界の方には、セミナーを後日ウェビナーとして配信する計画もあるそうです。
お越しになれない方々は、案内を楽しみにして頂ければと思います。
ではでは。
by.美里 康人