こんにちは。
早くも桜は青葉が目立ち、路上がピンクに染まってしまいました。
これはこれでキレイなのですが、やはりどこか寂しさを感じます。
さて今回は、ちょっと一般人には数字に付けられた単位にピンとこない事を利用した
ひとひねりされた宣伝文句を取り上げます。
前回の「〇億個!」という宣伝文句も
想像のつかない数字をあげる事で消費者の驚愕を煽っていました。
このケースと少し似た手法ではありますが
今回は想像のつきにくい単位を利用する事で
大きな数値感をイメージさせる手法です。
ずいぶんと昔のお話になりますが
大正製薬さんの「リポビタンD」のTVCMで
以下のようなのがありました。
「タウリン1,000mg!!」
いや、誤解なきよう(汗)
このコマーシャルがひどかったというのではありません。
(まぁ、多少なりとも射幸心を煽る目的もあったと推察はされますが)
この飲料は指定医薬部外品商品ですから
厚労省に承認を受けた有効成分のタウリンの含有量
それを正確に伝えただけの事ですので
さほど悪意があったとは言えません。
が、しかし。
この手法を面白いと飛びついたのか
ビタミンCが1,000mg配合されたレモン飲料に
「C1000〇〇〇」といった商品名を付けたり、と。
それでも、一時的なブームのようにいつのまにか忘れ去られていましたが
それが今になってまたぞろ
サプリメントや健康食品
そして化粧品にまで及んで、最近多用されています。
では、この数字のどこに悪意があるというのでしょうか?
はい、これは「単位」にカラクリがあります。
例えば上で例をあげた「1,000mg」
これを皆さんがよく知る単位に直すと
「1g」なのです。
つまり「C1000〇〇〇」の飲料には
1gのビタミンCしか含まれていないわけです。
「え? たったそれだけ???」
こう感じられませんでしたか?
一応、簡単に解説しておきますと
単位で「m(ミリ)」は1/1000を表しています。
長さの単位では、1m(メートル)は1,000mm(ミリメートル)ですね。
なので単位の前に「m(ミリ)」が付いた単位に落とすと
1,000倍になるわけです。
話を戻します。
上の飲料のビタミンC含有量が
1本中なのか100g中に1g(つまり1%)なのか
今では確認のしようがありませんが
一般的な概念で推察すると
1本中に含まれるビタミンC量だと考えられます。
(1本を飲むと、ビタミンCを1g摂取するという示し方)
これを多いと思うか少ないと思うかは、皆さんのご判断ですが
少なくとも「1g」と書いているよりも
「1,000mg」と書いてある方が多いと感じてしまうのが、ヒトの脳。
この感覚を利用したというわけです。
これはもともと、医薬品の有効成分表示から端を発しています。
医薬品の場合は
薬剤中に含まれている有効成分量の認可をきちんと受けており
それを正しく明記しなければなりません。
ただ、医薬品ってもともと商品の内容量が非常に少ないもの。
錠剤なんかに至っては、1錠で0.1gとかですね。
チューブに入った軟膏剤でも、10gや20g程度。
そのため、1錠や1本に含まれている有効成分量は
ごくごく小さい数値のグラム数になりますので
mgといった、単位をひとつ落とした数値で明記されているわけです。
とまぁ、いずれにしても
化粧品の場合は医薬品と違って内容量もそこそこ多いですし
ごく微量しか配合されていない成分でも
「mg」の単位で表してしまうと「オー!」と感じる数字になりますね。
これを例にならって、化粧品で例えを示してみましょう。
化粧品の防腐剤としてよく使われるパラベン。
これはだいたい、0.1~0.2%程度の配合で十分な効果が得られます。
という事は
200mLの化粧水だったとしたら
その中には最大で0.4gのパラベンが含まれている事になります。
この数字で書くと
「あ、その程度の量しか含まれていないのかぁ」
となるかもしれませんが
これを「mg」に直すと
「なんと、パラベンが400mg!!!」
これはちっとも嬉しくないですが(笑)
とはいえ、こういう手法を利用して
美容成分となる植物エキスなどの含有量を宣伝広告に使えば
「ソレらしく見える」
というわけですね。
5回に渡って取り上げてきたこの「魅惑の数字マジック」シリーズも、これで一応終わり。
またどなたか頭のキレるコピーライターの方が
消費者の心理をくすぐる新しい謳い文句を考え出し
市場で見掛けたら、取り上げさせて頂きます。
次回はまた違うお題を取り上げます。