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アクアインプールってなに? その1

梅雨明けとともに暑さ全開で
私のもと地元だった大阪では
子供の頃に遠足でよく行った遊園地「枚方パーク」
着ぐるみのアルバイト男性が
熱中症で亡くなっておられます。

思い出深いジャンクな遊園地ですが
こんな事故で全国ネットニュースで取り上げられたのは
残念でなりません。

さて、今回は成分のお話。

とは言っても、私の事ですから
植物エキスといった美容成分ではなく
化粧品の基礎製剤技術に関わる成分のひとつで
皆さんがあまり触れることのない成分について書きます。

既に皆さんもよくご承知の通り
人間の皮膚というのは、油も水も
浸透しにくいようにできています。

一般ユーザーさんお相手の
スキンケアセミナーでもよくお話するのですが
水が簡単に皮膚内に浸透するならば
お風呂に入ったら体重は増えてしまいますね(笑)

また、油をいつも触っている職業の方々も
これが浸透すると皮膚がブヨブヨになってしまいます。

いずれも、皮膚はバリア機能をもつこと
そして、もともとケラチンはアミノ酸のポリマーである
たんぱく質で構成されていますので
水や油で簡単に溶けて壊れることはありません。

結果的にこうした物質から皮膚は守られているからです。

ということは、化粧品を設計する場合
できるだけインナー保湿を解消しようとするならば
これらをかいくぐって浸透する技術を駆使しなければなりません。

まぁ、もっとも簡単なのは界面活性剤や
エタノールといった溶剤を少し配合することで化粧品の表面張力が下がり
角質層への浸透が容易になります。

しかしながらこうした素材は
今や消費者にはあまり好まれません。

となると、様々なDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術を駆使し
より角質層深部に到達させることで
プロなりに付加価値の高いスキンケアを
構築しなければなりません。

あ、一応ここで念押しをさせて頂きますが
手作りコスメのような
水に単に保湿成分(BGやグリセリン・ヒアルロン酸など)を配合して
美容成分を数種類添加しただけのようなコスメでは
こうした真のスキンケアは望めませんので
ご注意下さいね。
(この辺りが、良い商品を見極めるコツのひとつでもあるのですが)

ずっとこちらをご覧頂いている皆さんには
いまさら・・・のお話で、申し訳ありません。。。(汗)

さて、前置きが長くなりましたが
当然のことながら大手さんは
ここに独自の技術や素材開発で日々努力されており
他社との差別化を図っています。

例えば花王さんは
数年前にも「ブースター」という言葉を用いて
独自開発素材で化粧水の浸透性を高める製品を出していますね。
今は「est」「エターナルフロー」という製品名を用いて
その技術を反映させています。

コーセーさんは、その昔からDDS技術の「リポソーム」
その浸透性を達成されています。

そして、資生堂さんが数年前に開発されたのが
「アクアインプール」

水分をインナーに送り届け
そしてプールするという意味合いの造語でしょうか。

表示成分名は「PEG/PPG-14/7ジメチルエーテル」となります。

英文字と数字とカナばかりで
何がなにやらサッパリ分からないかもしれません。

PEGとは、「ポリエチレングリコール」の略です。
そしてPPGは「ポリプロピレングリコール」の略ですね。

なんのことか分からなくても
ポリエチレンくらいは
皆さんもお分かりになるかも、です。

そう、コンビニの袋に使われいてるポリ袋の素材ですね。

あ、でも誤解なく。
ポリ袋などのポリエチレンは
この後ろに書いている数字がもっともっと大きく
数万分子数にもおよぶ高重合ポリマーです。

ですので、この後ろに書かれてある「14と7」という数字が
PEGとPPGの分子数になりますので
ここがミソです。
あのような樹脂状のフィルムではなくて
液状の素材になります。

つまり、ほとんどの化粧水に使われている
皆さんよくご存じの保湿剤「BG(ブチレングリコール)」とは
親戚の関係にあると考えてもらえば分かりやすいでしょう。
分子数の対比でいうとBGは2くらいになりますので
あれよりももう少し分子の大きさが大きい素材と
そう考えれば理解しやすいかと思います。

だんだんと分子数が大きくなるにつれ
油性の性質を持ってきますので
これ位の大きさになると
油性のように皮膚へのなじみ性が高まるというメカニズムです。

つまり分子構造的には、水にもよく溶けますので
界面活性剤のような性質を持っているという感じですね。

この数字以上の分子数になると
完全に水に溶けなくなりますので
この表示されてある数字が非常にビミョーなところで
いわば独自ノウハウということです。

この成分を化粧水や美容液に配合することで
角質層への浸透が高まるという処方設計の仕組みです。

私もこの素材が配合された化粧水をつかってみたことがありますが
なかなかの浸透性能と、インナー保湿の持続力です。

さて、この「アクアインプール」ですが
この素材が世に広まると
化粧品業界は一気に良い化粧品が広まることになります。

それこそ、これを配合するだけで
手作りコスメレベルでもいい化粧水が作れる(笑)

しか~し・・・先に書いたように
これは資生堂さんの独自成分。
なので他社メーカーさんや私達OEM企業は
この素材を使うことはできません。

困った、困った・・・。
さて、業界はどうなったか。

続きは次回へ(笑)

by.美里 康人

2 COMMENTS

管理者

(2019年08月09日 21時33分22秒 ひらぎさんより頂いたコメント)

成分のことから知ることができて、基礎的化粧品を選ぶ上の参考になりました。

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美里 康人

(2019年08月10日 14時06分07秒 返信)
ひらぎさんへ
コメント、ありがとうございます。
もっとユーザーの皆さんに分かりやすく書ければ良いのですが、なにぶんにも文才がなくて、本当に申し訳ありません(汗)
それでもそう言って頂けると、嬉しいです。

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