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クレンジングの処方設計技術と新規性 その2

クレンジングの処方設計技術と新規性2

もうさすがにコートは仕舞い時期でしょうか。

いよいよ暖房器具も含め衣替えの季節ですね。
そろそろ趣味の、船で海へ出る季節です。
つい、休みはそちらに頭が集中してしまう
美里です。

こんにちは。

さて、時代を追ったクレンジングの処方設計の2回目です。
いよいよ具体的な処方設計技術のお話に入っていきます。
一般ユーザーさんでもある程度理解しやすいよう
かみ砕いて説明していきます。

まず、クレンジングの処方設計には
必ずメイクを何で落とすかが重要なポイントとなります。

メイクを落とす素材とは
つまりメイク料となじむ成分ということ。

そのメイクとなじむ素材としては、以下の3つがあります。

・オイル
・界面活性剤
・溶剤

つまり、このどれかがメイク落としの機能素材として
必ず配合されるのが鉄則という事になります。

ただ、メイク料といっても
水で落ちるマスカラといったものも市場にあり
これはオイルにはなじまないものですので
ここも総合的には配慮しなければならないポイントです。

では、これを基本として
過去の歴史でどのような処方設計が組まれたのか
順を追って述べていきましょう。

ちなみにこうしてクレンジング技術に焦点をあて
歴史をさかのぼってまとめた記録は皆無だそうです。
貴重な記事になるのかもしれませんね。

1.クレンジングクリーム
オイルがメイク剤となじむ事に目がつけられ
それをメイク落としに活かそうと最初に開発されたのが
クレンジングクリームでした。

オイルをメインとして、界面活性剤を使って水と乳化させた製剤ですが
普通の親水性保湿クリームだと水分が多くてメイクと同化しないため
水分と油分の割合はオイルリッチとなっている点が特長でした。

また、ただ単にメイクと同化させるだけではお肌からオフする事ができないため
界面活性剤の種類をうまく選定する事によって
洗い流しの水を加えた時に親水性へと再乳化することで水洗が可能になる
この二点が大きな処方設計の特長でした。

オイル主剤となっている事から
どうしても洗い流し後もオイル感が残るため
最近の市販商品ではあまりみられなくなりました。

2.オイルクレンジング
オイルがメイク剤となじむ事を利用した次の発展形として
リキッド状のオイルクレンジングが開発されました。

こちらも、オイルとメイクをなじませるだけだと
物理的にお肌からメイクを取り除くことができないため
水と溶けあって洗い流しが可能なように
界面活性剤が多量に配合されていることが特長です。

界面活性剤の選定としては
主剤のオイルと完全に均一に溶けること
そしてその後に洗い流しの水ともすぐに溶け合うように考えられたのが
処方設計の特長です。

こちらもオイル主剤となっているため
洗い流し後はどうしてもオイル感が残り
オイルに対して肌トラブルを起こすユーザーがおられることが欠点です。

また、液状になっているため
手にとりにくい欠点がありますが
残念なことに
オイルを増粘させる増粘剤が世の中に存在しないため
いまだにこのタイプはトロトロの液状になっているのが特長です。

3.クレンジングジェル(オイルジェルタイプ)
その昔、花王さんが「キュレル」ブランドで大ヒットさせた
オイルをベースとしたクリアなクレンジングジェルです。

現在市場に存在する水ベースのクレンジングジェルとは全く異なって
オイルがベース
であるため
非常にメイク落ちが良いことで市場を席捲しました。

オイルをベースとし
ある種の界面活性剤と水との3成分でなり
絶妙なバランスでクリアなジェルとなる処方設計
が特長でした。
また、保湿成分に使われるグリセリンやBGといった
多価アルコールが重要な意味をなし
ジェルコントロールに非常に技術を要した処方設計でした。

一方で、花王さん、資生堂さんなど大手ブランドが
あらゆる配合特許を取得

中小のメーカーは同じような製品を作る事が困難となり
イライラさせたのもこのクレンジングでした。

しかしながら、この絶妙なバランスが致命的となり
少しでも水が入るとメイクが落ちなくなったり
チューブの中で分離を引き起こしたり
はたまた、温度に弱かったりと
品質面で問題が生じてしまうことから
結果的に市場からは消え失せてしまいました。

また、テクスチュアの上では
メイクときちんとなじんだ時に
「スル」っと滑りがよくなる「転相現象」が起きることから
「ツルンとなったらメイクが落ちた合図」
わかりやすいPRが有名になったのも
特長的でした。

4.ミルククレンジング(オイル系タイプ)
ごくわずかな商品しか市場には出回りませんでしたが
真の意味で「ミルクレ」という言葉が流行したのは
このタイプのクレンジングからでした。

現在、市場に存在する「水ベースのミルクレ」とは
全く処方設計が異なる
ことはあまり知られていません。

その当時のミルクレは
上のクレンジングジェルの処方設計と類似しており
上の3成分のある比率バランスの時に
ちょうどよい乳液状になることを利用した
特異な処方設計
でした。
(多価アルコールが多いことが特長)

当然のことながらクレンジングジェルと同様に
品質的に非常に繊細であることから
このタイプはすぐに市場から消えてしまいました。

これにとって代わったのが、お肌に優しいとの評価を得た
「ポリマーを使用した、水ベースのミルククレンジング」

でしたが
こちらはオイル分がかなり少ないためメイク落ちがよくなく
さらに水で洗い流せない
ため
「ふき取りタイプ」としていまだ市場には残っていますが
ふき取る行為がお肌にストレスを与えるため
市場ではほとんど存在感はないと言って良いでしょう。

ここまでで
おおよそ昭和の時代のクレンジング背景
という感じでしょうか。

長くなりましたので、平成以降は次回へと続けましょう。

by.美里 康人

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