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乳液の目的は水分を補うこと

乳液の役目

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美里康人

乳液の目的は油分を補う誤解
実は水分をきちんと補う目的というお話

今週は少々多忙なためちょっと短めの記事になりますが、ご容赦下さいませ。

唐突ですが、ユーザーの皆さんは乳液をスキンケアに取り入れる目的はどこにあるとお考えでしょうか?

結構な割合いで、油分を補う目的とお思いの方がおられるのではないでしょうか。
ずいぶんと以前にも少し解説したことがありますが、今日はあらためてそうではないというお話をしていきたいと思います。

水は浸透しない

お肌のケアには水分補給がもっとも大切だとよく言われますが、実際には水は非常にお肌の中に入っていきにくいということはご存知でしょうか。
もともと水という物質は非常に表面張力が高く、水分子同士が引っ張り合う繋がりが強いことがその理由です。
表面張力はエタノールのおよそ3.5倍の数値ですので、その染み込み難さはお分かり頂けるでしょう。

それはさておき、10年以上前にこの話題の解説をした時には、簡単に皮膚に水分が入り込むようなら、お風呂やプールに入ったらブクブクに太ってしまいますよねなんて例えで説明していましたが、ちょっとあれは誇張し過ぎでしたね。
スキンケアの保湿目的である水分補給は、そのような皮膚の奥底や細胞まで水分を透過させるわけではありませんので、そういうレベルで説明するのは不適切でしたね。

もともとスキンケアはサランラップの厚みほどの角質層のコントロールですので、もう少し正しく解説していきましょう。

とはいえ、結論は変わりません。
角質層まで届けばいいとはいえ、皆さんもよくご存知なようにここには皮膚を守る大事な“バリア層”と呼ばれる層があるためです。
では、なぜこの層があると水分がブロックされてしまうのでしょうか?

構造のメインは脂質

この理由に対して時に語られるのは、皮脂が分泌しているからというお話。
もちろん、これも間違いではありません。
この皮脂の存在によって皮膚は疎水的(水をはじく)になっているのは間違いありません。
皮膚の上に乗っかった水はポツポツと水滴になってはじき、これはその影響が大きいと言えますし。
ただこれは石鹸や洗剤を使うと落ちてしまいますので、簡単に除去されてしまいますね。
結局、角質層のところで水分がブロックされるのはバリア層によるもので、この10枚以上にも及ぶバリア層がセラミドなどの細胞間脂質と呼ばれる「脂質」で作られているためです。

いまさら言うまでもありませんが、脂質とは“油”の事ですので当然水はこの層ではじかれてこの先に水分は補給されません。
しかもここの脂質は油性物質の中でも特に水に溶けにくい成分でできていますので、ことさらここは強いバリアでできていると言えます。

で、スキンケアでいう保湿の目的は、この油脂成分の細胞間脂の層と、水にもなじむ性質を持った界面活性剤のようなリン脂質を超えたところに水分を送り届けてあげることなんですね。
つまり、ここに水分が必要というわけです。

どうすれば届くか

さてそうなると、ここに水が届くような工夫がされていない化粧水は、保湿効果が薄いということになります。
もちろん、グリセリンやヒアルロン酸といった水分を留めたり集めてきたりといった機能を持った保湿成分が入っているでしょうから、水で濡らしただけよりもはるかに期待できることは間違いありません。
ただ、やはり本質的な解決には不十分と言えます。

ここまで書いてくれば、もう勘の良いユーザーさんは理解されたことでしょう。

少し前に記事にした牛乳のような乳化製品(エマルジョン)ならば、ここに届く可能性が出てくることはお分かりですね。
クリームはさすがに油分が多いので、ベタつくのを好まれない方やオイル成分でトラブルを招く毛穴体質の方は、選択を避けたいところ。
お答えにたどり着きましたね。
脂質と同じ性質の油分と水が乳化されたものですので、当然のことと分かります。
そう、まさに牛乳のような乳液が、これに適していることが分かってきます。
自分のお肌に合う乳液を見つけ出すことが、実は水分補給のもっとも近道であることがお分かり頂けたかと思います。

こうした理に叶ったメカニズムをスキンケア取り入れようという考えが、コーセーさんが提唱を始めた「乳液先行」のスキンケア理論というわけですね。
こうして通り道を作ってあげておいてから、さらに足らずの水分と保湿成分を化粧水で補っていくという理屈です。

界面活性剤への誤解

最後に、ここまで解説してくると、この乳化製品を設計するために界面活性剤が使われていて、それがバリア層を壊して水分を届けようとしているのではないかと誤解される方が出てきますし、そんな理論を提唱する浅はかなガセ情報も見受けます。

乳液レベルの油分を乳化するために配合されている界面活性剤などごく少量ですので、バリア層を壊す性能など持っていません
強い洗剤で手を洗ったところでせいぜい手荒れ程度で、一気にバリア層が壊れたりしていませんので、この程度の界面活性剤で壊れるほどバリア層はヤワではありません。

バリア層のところに界面活性剤が使われた乳液によって水分が補われるのは「湿潤」という効果で、いわゆる「ヌレ性」と言われる拡散効果で、水分が補填されるのですね。

以上、今回は短い目の解説で申し訳ありませんでしたが、また次週。

by.美里 康人

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