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「香料」の表示のない香料

香料の表示

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美里康人

エッセンシャルオイルは「香料」ではありませんが
香料の表示がされていない合成の「香料」があります

今回は香り成分についてのお話。

今や旧「表示指定成分」という言葉も死語と化していますが、合成の香料はもともと旧表示指定成分として指定されて、「香料」と表記しなければなりませんでした。
パラベンなどのように、いわば人によっては皮膚になんらかの影響を及ぼす成分として、厚労省が注意喚起の意味でリスト化した成分の中のひとつでした。
そのため、今でも天然志向をブランドコンセプトとする無添加を謳う製品などは、この香料の表示を避けるために天然の精油(エッセンシャルオイル)がよく化粧品に使われています。
香り成分としては世界最高級のバラの香りを持つ、ブルガリア産のローズ油(表示名称:ダマスクバラ花油)が有名ですね。
ローズの香りであれば、少し価格もお安いワイルドローズ油(表示名称:ローズ油)などもあります。
他にもラベンダー油やカミツレ花油など、何種類かの植物精油が化粧品には使われています。

とはいえ、精油はどこの誰が購入しても同じ材料を購入することになりますので、どうしても香りのパターンは同じことになってしまい、化粧品の香りもバリエーションが限られてしまいます。
なので、ここ数年前からブランドによって香りの差別化をするために、合成の香料がまた見直されてきています。

そんな背景とともに、香料のお話を少ししていきます。
実は香料の表示がされていない合成の香料もありますので、そんな話題をとりあげてみましょう。

なぜ香料は表示指定成分だったのか

まず最初に、上で触れたように合成の香料が表示指定成分だった背景に触れておきましょう。

ユーザーの皆さんもご承知かと思いますが、香水やオーデコロンの使用方法からもお分かりの通り、香りの成分は直接お肌に塗布すると痒くなったり紅斑が出る方もおられたりで、皮膚に影響が出る事例が多くあります。
中にはアレルギーを発症する方もいたり、紫外線にアタると紅斑が出るといった被害も検証されています。

そのため、香料が配合された化粧品は、相変わらず毎年のように被害症例が報告されているのも事実です。
実際に皮膚科がまとめた症例報告データを掲載し、以前に記事にもしています。

アレルギー症例報告から
https://cosmetic-web.jp/column/allergies01/

このように、やはり香料は少量配合されているだけでも一部に皮膚トラブルが出る方もおられ、注意喚起の意味で指定されて「香料」と括って表示するよう規定されていたわけです。
今もこの時の規定は引き継がれていて、天然由来の精油以外の合成香料は「香料」という表示をするように決められています。

最近は、バラエティショップなどでアロマ用(芳香材料)の雑貨品香料が販売されていて、これを使って手作りコスメに加えられたり、無香料のコスメにイチ足しされる方もおられるそうで、過去のこういった経緯をご存知ない方はくれぐれもご注意されて下さい。
こういった雑貨店にて販売されているアロマ香料は、「ローズの香り」などと天然素材の名称が着けられていたりしますが、これらはあくまで合成香料であって化粧品に使われている精油(エッセンシャルオイル)ではありません。
皮膚に塗布する製品に使われている精油はまったく別の原料ですので、ご承知おき下さい。
また、以下で解説していきますが、雑貨品のアロマ用香料はお肌に塗布して良い成分で構成された香粧品用の香料ではありませんので、決してお肌に適用したり化粧品に混ぜたりしてはいけません。
皮膚に塗布することを前提にした製品ではありませんので、仮にお肌に塗布してひどいカブレやアレルギーを起こしても、責任は自分にあることをお忘れなく。

化粧品の香料とは

さて、化粧品の香料の皮膚への影響について簡単に説明してきましたが、では化粧品に使われている香料とは、どうやってできているのでしょうか。

化学的なお話ではありませんが、すでに皆さんもご存知の通り、実は香料というのは単品の成分ではなく、香水やオーデコロンのようにバリエーションを作るために、何十種類もの単品の香料を混合して作られています
これによって様々な香りのパターンが創作されているわけですね。
なので高級ブランドのコスメになると、香水やオーデコロン並みに良い香りがします。

ですので、実は香料はこうして何種類もの成分で構成されていますので、ユーザーの皆さんがカブれたり赤くなったりする皮膚への影響は、この中の幾種類かの素材が皮膚に反応したということになります。
そしてこうしたデータはきちんと世界的にエビデンスがとられて整理され、「IFRA」というインターナショナルスタンダードが設けられて、日本も香料工業会がこれに統一して統括されています。
なので、正式な香料会社さんから香料を仕入れれば、この規制に則った化粧品用の香料が使われているということになるのですね。

とはいえこうした規制でも、皮膚にほんの少し影響があるものまで全て配合禁止にしてしまうといい香水やオーデコロンが創作できないことになってしまいますので、注意すべき成分も含まれています。(香水やオーデコロンも化粧品ですので、ご承知置きを)
また、一部の人にはアレルギー反応が出ても、ほとんどの人には影響はないという成分もあります。
食材でいえば、卵やそば・小麦といった食材と同じと考えれば分かりやすいですね。

なので、こうした成分は食の世界と同様に、注意喚起のためになんらかの表示をするように決められている国があります。

欧米の規制

日本ではまだこういった規制は施行されていませんが、こうした人体へのアレルギー成分に対して厳しい欧米諸国では、香料についてはさらに消費者への喚起義務が課せられています。
それが、以前にも少し触れた「EU26アレルゲン」と呼ばれているもので、26種類の香料成分については、パーソナルケア製品や化粧品に成分の表示義務があります

以下の成分です。

・シトロネロール
 ・ファルネソール
 ・ゲラニオール
 ・リモネン
 ・リナロール
 ・クマリン
 ・サリチル酸ベンジル
 ・アミルケイヒアルデヒド
 ・ケイヒアルコール
 ・α-イソメチルイオノン
 ・ヒドロキシシトロネラール
 ・オイゲノール
 ・イソオイゲノール
 ・ヘキシルシンナマル
 ・アミルシンナミルアルコール
 ・ベンジルアルコール
 ・安息香酸ベンジル
 ・シトラール
 ・ケイヒアルデヒド
 ・ケイヒ酸ベンジル
 ・2-オクチン酸メチル
 ・アニスアルコール
 ・ツノマタゴケエキス
 ・エベルニアフルフラセアエキス
 ・ブチルフェニルメチルプロパナール
 ・ヒドロキシイソヘキシル-3-シクロヘキセンカルボキシアルデヒド

この26個の成分は欧米では化粧品に表示義務がありますので、いわば日本でいうところの表示指定成分のようなものです。
日本でも、この中の8種類は香料ミックスとして「ジャパニーズスタンダードアレルゲン」の中に含まれていて、アレルギーのパッチテスト成分として規定されています。

ということは、これらの製品は日本にも輸入されますので、日本の規制に則った化粧品の表示成分として存在していないと、全成分の表記に対応できません。
そのため、全成分の表示名称として10年以上前から登録されています。

ということは?

この制度を利用したらどうなる

香料表示

さぁ、ここでお題の課題が出てくることになります。
そう、これらの合成香料成分は個別に表示名称が与えられていますので、「香料」の表記には入らない事になります
もちろん、他の香料成分を使えば「香料」と表記しないといけなくなりますが、もしもこの26の合成香料成分だけで香りを作ったとすれば、それぞれの成分名を表示するだけでよく、香料の表記はしなくても良いことになりますね。

そういった化粧品が、一部に出てきているのです。
そして、天然由来コンセプトやオーガニックをアピールする「香料フリー」となっていたりします。
その良し悪しについては言及しませんが、ここまでの背景を踏まえるならば、消費者の立場としては注意しなければなりません。
おそらくは、いずれ日本においても個別に表記しなければならない規制が設けられると思いますが。

ただ、一方でユーザーの皆さんに誤解を招いているケースがあることにも、触れておこうと思います。

輸入製品への誤解

海外にも、オーガニックといったナチュラル系のコスメがたくさん市場にあります。
例えば、アメリカのAVEDAあたりもこのコンセンプトのコスメで有名ですね。
で、当然こうしたコスメはあちらの規制に則って、成分の表示にこの香料成分の表示がなされています。

ということは、ナチュラルという言葉はウソだったのでしょうか?
@cosmeでも、成分に少しお詳しい方の中にこういった指摘を見掛けます。
合成香料成分の表記があってガッカリした・・・と。

いえいえ、これは間違っていますし早合点です。
なぜなら、これらの成分の中には「単離香料」といって、天然の精油から抽出した単体成分の香料も含まれているからです。

例えば上のリストの中に「リモネン」という成分がありますが、これはレモンなど柑橘類の果物にたくさん含まれている成分で、これらの果物から単体で抽出して香り成分として作られていることも多く、これならば化学合成された成分とは言えません。
もちろん、この果物がオーガニック栽培で作られたものであれば天然由来素材であり“オーガニック”なのです。
あくまで「単離香料」なのですね。

この辺りは、使われている素材の製造方法が分からなければどちらか私達には分からず、中には化学合成で作られたお安いリモネンもあります。
いわゆる石油由来とでも言いましょうか。
例えば昔からあるレモン石鹸なんかは、化学合成で作られたリモネンが配合されていましたし。
いくらなんでも、AVEDAさんがそこまでウソの標榜をしているとは思えません。

こういった輸入製品は、そのブランドさんのコンセプト説明を調べるなり問い合わせてみるしかありませんが、そこは信用するしかないと言えます。
いずれにしても正式なオーガニック認証を取得した製品であれば合成の香料は使えませんので、信頼に足ると言えるでしょう

ということで、今回はここまで。
ではまた次週。

by.美里 康人

3 COMMENTS

Noah The Cat

お久しぶりです。
今回はとくに興味のある「匂い」もので嬉しいです。
元々肝臓が薬アレルギーなので、全身なんやかやと接触性皮膚炎を起こしがちなのに、香水は大好きという拗らせ体質←香水は身嗜みですから。
欧米人のようにうなじや手首に香水を吹き掛けて外出すると、30分ほどでも赤く腫れ上がるので、服で隠れる部分や、服の裏側に吹き掛ける派です。
香水ムックで見る「香水のミストの下をくぐり抜ける」はシミ・シワの原因になりやすいと敵視しています。何しろ主成分はアルコールと香料ですから、顔には特に浴びたくない物の1つ。
スキンケアに使用される香料も好きですが、日光に当たると小さな肌荒れ部分に炎症を起こしやすいので、いわゆる「無香料」コスメに落ち着いていますが「無香料」でも「原料臭」がしっかりあるコスメは少なくないですね。
例えばSK◯のトリートメントエッセンスは牛乳発酵液由来のせいかヨダレのような匂いがします。水の代わりに日本酒由来の発酵液を使ったもの、ウィッチヘーゼル、ローズウォーター、白樺水、アロエベラ、へちま、最近ならセンテラアジアチカ等々、増粘剤が水糊やゴム糊のように匂ったり。原料自体が持つ臭気は枚挙に暇がない。
どの商品も他製品と区別化して美容液成分9◯%配合などの価値をつけるために、水の代わりに使われていて、その原料臭自体も効果・効能の1つあるいはアピールポイントの1つになっていますね。
合成香料不使用・無香料イコール無害・無臭な訳ではないので、見極めるにはしばらく使ってみるしかない、これは意外な盲点だと思います。
合成ガーと煩い方もいらっしゃいますが、そもそも化粧品を買うということは、製造工場で工業的プロセスを経ているという時点で既に自然物ではないですよね。
自宅の庭で育てたアロエベラやヘチマ水を持って「非合成物」になるのでしょうが、その品質管理の責任は?という大きな壁にぶち当たります。

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美里 康人

>Noah The Catさん

バタバタしていてお返事が遅くなり、すいませんでした。
よくご存知の方なので甘えていたかも(笑)

アレルギー、同様です・・・。
もともとアトピーが加速したキッカケになったのが、製造現場の香料調合や調香をしていてアレルギーが勃発してからですから(苦笑)
香りの仕事が好きだったのに、扱うと揮発物質で顔面がヤラれてしまう・・・と。
なにせ当時は、ヘアケアのエアゾール製品にはがっつり香料が配合されていて、100kg単位でガバガバとオープンエアで調合してましたから。
アトピーの話題は少しだけ次回の記事で触れますが。

原料のお感じになっている異臭は、必ず成分解析していくと共通している何かの臭いに成分がたどり着きますね。
ヨダレ臭も、まんざら無関係とは言えないかも?
だってプロでいらっしゃるのですし。

また今後ともよろしくお願いします!

返信する
Noah The Cat

いえいえ、とんでもない。
美容製品全般については”ずぶの素人”でごさいます。
アレルギー体質が災いして、アレルギー物質からの逃避のために成分一覧をよく見るだけの一般人です。

ただ、ある種の嗜好性の食品分野ですが、小さな会社で製造・管理・人事・販売・経理・他庶務・雑務全般にマルチプレイヤー社畜として約6年どっぷり肩まで浸かっていたので、普通の方よりもスレているだけです(苦笑)

別記事ですが、レシチン良いですね。手持ちの基礎化粧品に結構使われていました。
特にT〇●T V●●Tさんのセラミド配合商品。もちろんご存じ、釈迦に説法な蛇足ですが。

新しい記事を楽しみに待っております。

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