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医薬部外品とコスメシューティカル

コスメシューティカル

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美里


今回の話題は「コスメシューティカル」

初めて聞く方にも分かりやすく解説

 

「コスメシューティカル」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。

ブランド名に類似した言葉が使われていたり、特別な効能があることを表現する目的でこの言葉を使っている製品を目にすることもありますね。
では、この言葉の意味は何かのか、はたまた法的に決められたこういう特別なコスメのカテゴリーがあるのか、解説していきたいと思います。

言葉の意味は

この言葉を耳にされたことがある方は、どういう意味に理解しておられたでしょうか?
医薬部外品でもないけれど、薬効的な効果が高いコスメの代名詞という感じでしょうか。
早速具体的な解説ですが、まず日本のコスメにこの名称のカテゴリー付けはありません。
日本でこの言葉の意味に近しいのは「医薬部外品」になります。

でも、コスメシューティカルを名乗っているコスメは、医薬部外品ではありません。
これは法的な分類になり、薬機法上でこの言葉はありませんので、誤解のないようにして下さい。
医薬部外品という法的な規定のカテゴリーは日本特有のものですので、海外には存在しません。(日本製海外ブランドは除く)

でも、実はこの言葉を直訳すれば「コスメシューティカル→薬用化粧品」といった意味合いになります。
翻訳アプリに掛けてもこの通りに訳されます。
ここで誤解が生じやすいのは、薬機法で決められた医薬部外品のカテゴリー分類の中に、「薬用化粧品」というカテゴリーがあるんです。

私の著書の方から引用、以下の通りです。

コスメシューティイカル

 参照:化粧品の基礎知識-皮膚生理からブランド戦略まで

ですので、そのまま直訳すると医薬部外品の中の薬用化粧品と誤解を招いてしまいます。意図してユーザーさんの誤解を誘導するような使い方をしている商品も見受けますので、ここは間違わないようにしましょう。

となると、この言葉の語源はどこにあるのでしょうか。
ここにその答えが隠されています。

言葉の語源

実はこの言葉は、海外から入ってきたものです。
しかもこの語句、実は造語。
“cosmetic”に、もともと存在していた“pharmaceutical”とを合体させた言葉です。

こうして分解すれば本当の意味が見えてきますね。

“cosmetic”→化粧品
“pharmaceutical”→調剤薬

調剤薬とは、薬局や病院で調剤してもらう医薬品のことですね。
ですので、薬局や病院で出してもらう化粧品ということになります。

海外には、こういった化粧品店舗や通販では販売されていない、「調剤化粧品」のような製品が存在しています。
ユーザーの皆さんもよく知る製品としては、こういったブランドがもっともイメージしやすいですね。

・ゼオスキン
・エンビロン
・デルファーマ

いわば、海外の化粧品ですが医療機関でしか購入できないコスメのことです。
ラロッシュポゼあたりもそうでしたが、今は一般販売もしていますので、少し方向性が変わっています。
日本にも、資生堂が提供していた同様のブランド「ナビジョン」があります。

本来の調剤コスメは、医療機関で医師アドバイスの元に処方されるもの(例えばハイドロキノンクリーム)ですので少し意味合いは異なりますが、ブランドの決め事によっては医師が診察してからでないと購入できない製品もありますので、かなり近いと考えてよいでしょう。

とはいえ、この海外でのコスメシューティカルの概念も、実はきちんとした決め事や法的なカテゴリーがあるわけではありません。
アメリカでもこれは大きな問題となり、この言葉を利用するコスメメーカーが多発したため、FDA(アメリカ食品医薬品局)は以下のようなパブリックコメントを出しています。

<以下、FDA公式サイトより引用、和訳>(和訳の微妙な解釈の違いはご容赦下さい)
====
「cosmeceutical(薬用化粧品)」という用語は、法律の下の決め事には存在しません。
一方で、連邦食品医薬品化粧品法 (FD&C法)は、化粧品業界で医療や薬物様な利点を持っている化粧品を提供する場合にこの言葉の使用を認識しています。

こうした製品は、医薬品・化粧品、またはその両方にまたがってしまいます
FD&C法では、医薬品は病気を治療、治療、緩和、予防する製品、または人体の構造や機能に影響を与える製品と定義しています。
製品がそのように標ぼうをしている場合、医薬品として規制されます。
化粧品は美化、魅力の促進、外観の変更、または洗浄を目的としています。
こうした製品はFDAによって販売が承認されておらず、体の構造や機能に影響を与えることを意図していません。
====

化粧品メーカーによってこうした医薬品的な効果を標ぼうする製品が氾濫したことで、このような見解が発表されたというわけです。

日本でも本来の意味合いとして正確なのは、上でも触れた医療機関で独自に調剤された調剤コスメですね。
AHA製剤やハイドロキノン製剤は、処方して頂いたユーザーさんもおられるかと思いますし、これはお薬(医薬品)とは意味合いが異なってまさに本来の意味の調剤コスメに該当します。
これが本来のコスメシューティカルの正しい解釈と言えます。

意味が異なるドクターズコスメ

ここまで読み進めてくると、市場にたくさん見かけるドクターズコスメの製品群とリンクされる方も多いことでしょう。
クリニックでも、上の海外のコスメシューティカルと混同して自社製品の化粧品も一緒に販売しているケースも見掛け、患者さんにとっては違いが分からずに購入されているケースもあると思います。

製品の良し悪しがどうこうではなく、製品の中身は海外のコスメシューティカルと一緒にはできません
なぜなら、日本で作られているドクターズコスメは、正確にはドクターズ【ブランド】コスメです。
あくまで医療機関がプロデュースされた、薬機法や業界自主規制の化粧品規格に則って設計された化粧品のブランドになります。

その違いは成分の使い方を知れば分かりやすく、例えば以下の薬剤はドクターズブランドコスメでも絶対にあり得ません。

・高濃度AHA
・生ハイドロキノン製剤
・高濃度レチノールやレチノイン酸製剤
・コウジ酸製剤

いずれも薬機法、もしくは業界の自主規制でこれらの成分は化粧品への配合が規制されていますので、よほどジャンクなコスメでもない限りあり得ません。

時に、クリニックプロデュースブランドで<AHA(フルーツ酸)配合>といった製品を見かけることもありますが、成分名をみると「乳酸Na」などと中和されており、角層剥離効果としての”酸”の役目を果たさない製品だったりします。
*クエン酸はpH調整剤ですので、誤解なきよう

お作りになった工場さんも、ドクターからの要望に対して苦肉の策なのだと思いますが、これではユーザーさんの期待をあざむいてしまうことになりますので、要注意です。

今回の話題はここまでですが、こういったドクターブランドでユーザーさんを誘導するかのようなブランド志向は、日本だけではありません。
例えばドクターオバジ。
もともとは完全なコスメシューティカルでしたが、今では日本でもそのブランドが使われて、市販コスメも出されています。
ユーザーさんとしては、本来のドクターオバジブランドと区別しにくいですね。

もちろん、化粧品としてそれぞれの商品の良し悪しを述べているのではないことは、再度念を押しておきたいと思います。
むしろ私個人としては、コスメシューティカルは海外流の「ハイリスクハイリターン」なコスメで、決してユーザーさんにはオススメできないと思っていますので。

流行り言葉の“安心安全”で言うならば、やはり市販のドクターズコスメに利があります。
では、また次週。

by.美里 康人

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