◆◆FILE No.085 / 2008年9月配信◆◆
カガク、ニガテ。。。有機物・無機物~その2
さて、前回から有機物と無機物についてお話をしています。
日焼け止めなどに使われている酸化チタンや酸化亜鉛などの金属は無機物。
そして紫外線吸収剤は有機物というお話でしたね。
さらに皆さんも「有機農法」「オーガニック」といった言葉は
どこかで耳にした事があるというところまでお話しました。
では、有機物というのはどういう物質をさすのでしょうか。
これは化学的に簡単に言うと
化学構造中に『炭素(C)』を持っている化学物質
という事になります。
皆さんが大嫌いな”亀の甲”と呼ばれる
下記のような化学式であらわされる物質も
それぞれ炭素(C)を中心に手を延ばしていますので
有機物です。
とは言っても
炭素を持つ化学物質と言われたところで
一般の皆さんにはなんの事だかよく分りませんよね。
そこで、もっと理解しやすい説明をしましょう。
*
皆さんは、「炭素」と言えば何を連想しますか?
そう。炭とかカーボンですね。
つまり、木や紙が燃えてしまった最後の黒いカス。
これが炭素の塊です。
ダイヤモンドもこの炭素の塊だということを
ご存知の方もおられるでしょう。
という事は
燃える物質は全て有機物ということになります。
そして全ての有機物は
燃焼することで最後には炭素だけになる。
こういうことですね。
逆に言うと、燃えない物質は全て無機物となります。
身の回りで燃えるモノを想像してみて下さい。
・ガソリンなどの燃料
・紙や布
・ビニールやプラスチック類
・砂糖などの糖類
そして生きている植物や動物なども全て燃えます。
たんぱく質やアミノ酸なども全て燃えますので
有機物に該当します。
もう少し分類を分りやすくするとこうなります。
・生物に由来する物質
・石油由来の化学合成物質
おやおや?
動植物由来と石油由来合成物質・・・。
同じ仲間に入ってるいるというのは
ちょっと気になりますね。
またこれは、後ほど触れることに致しましょう。
で、有機農法やオーガニック栽培とはどういう事かというと
前回の最後に書いたように、通常の植物の栽培には
リンや窒素・カリウムといった無機物の化学肥料をよく用います。
それに対し
牛糞など動物の排泄物や植物の堆肥を肥料として用いるのを
有機栽培と呼びます。
つまり、生物由来の肥料なので
有機物が含まれているということです。
これでだいたい、お分かりいただけたでしょうか。
* * *
いよいよこの項の最後になりますが
今回は、日焼け止めのお話と関わりがあるので
コスメのメルマガにも関わらず、こうした化学のお話をしました。
でも実はそれ以外にも理由があります。
ここで先ほど後回しにしたお話に触れることになります。
有機物とは人間を含めた動植物
そして石油由来化学合成物質であると書きました。
つまり、石油も動植物の堆肥から生成された産物ですから
生物である人間と石油は深い関わりがある
ということなのです。
昨今コスメユーザーの間では
石油由来成分を化学合成物質と
毛嫌いする風潮をよく目にしますが
この辺りをきちんと理解して思慮しているのか
はなはだ疑問に感じるのです。
石油由来成分も人間も有機物ですから
非常に身近な存在なのです。
それゆえ人間、いえ、お肌とも大変関係を持ちやすく
浸透・吸収されやすいということです。
つまり、良い面も悪い面も持っているのです。
分子量が小さい石油由来成分は
(例えばガソリンや溶剤など)
お肌の中に侵入すると良くない害になる成分。
対して、多くの皆さんがコスメに期待する
植物エキスなどに含まれる有機物は
お肌に入って有効性を発揮する成分。
ようはいずれも有機物であって
分子構造の違いだけで、
人間にとってプラスに働くのかマイナスに働くのか決まる
それだけのことなのです。
それに対して無機物は
人間とは関わりが非常に薄いので
お肌に対して影響があまりない物質ということになりますね。
*
結論として言えることは
人間やお肌にとってよくない成分というのは
原因となるなんらかの特異な化学構造を持った物質であって
石油由来合成成分だからお肌に悪い
そして、天然由来有効成分だからお肌に有効
かつ、安全なのではないということなのです。
玉子などの動物由来成分や
うるしやイチョウなどの植物成分が
人間にとってアレルギー性があるのも
ようはそういう事なんですね。
もちろん、いずれも有機物なのです。
私達化学屋は
こうした人に対する影響の良し悪しを
化学構造から傾向を見極めて
化学合成によって安全なモノを作り出し
天然素材から良いものを見い出しているわけです。
ちょっと難しいお話でしたが
皆さん、なんとなく理解できたでしょうか。