美里康人
複数のキツい防腐剤が配合される理由は?
今回はヘアケアの話題。
皆さんは、シャンプーやコンディショナーの全成分をご覧になったことがありますか?
以前に旧Twitterでも明かした通り、これらの製品の全成分を用途毎にブロック分けをして見ていくと、防腐成分のところによく複数の成分が使われていることに気付かれているでしょうか。
一般的なコスメの防腐剤といえばパラベンやフェノキシエタノールが有名ですが、それ以外にもプラスされていることに気付くことと思います。
今回はなぜそうなっているのかといった解説も含め、現状を見ていきましょう。
この記事の目次
全成分を見てみよう
では早速、大手ブランドさんの製品を例に、実際の全成分を見ていきましょうか。
全て羅列すると見づらくなりますので、添加剤成分のところからピックアップしてみました。
まずはシャンプーから。
■資生堂
・バラ園 ローズシャンプー
・・・クエン酸、BG、EDTA-2Na、PPG-70ポリグリセリル-10、BHT、フェノキシエタノール、安息香酸Na
・マシェリ モイストシャンプーEX
・・・クエン酸、サリチル酸、EDTA-2Na、乳酸アンモニウム、EDTA-4Na、BG、フェノキシエタノール、安息香酸Na、香料
椿のシリーズも同様です。
■花王
・セグレタ シャンプー
・・・安息香酸Na、フェノキシエタノール、メチルパラベン、BHT
・エッセンシャルビューティ バリアシャンプー
・・・フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、エタノール、水酸化Na、安息香酸Na
■カネボウ
・サラ シャンプー
・・・水酸化Na、加水分解コンキオリン、安息香酸Na、フェノキシエタノール
・クラシエ いち髪 シャンプー
・・・エタノール、BG、プロパンジオール、EDTA-2Na、安息香酸Na
■P&G
・ハーバルエッセンス シャンプー(代表)
・・・クエン酸Na、クエン酸、香料、安息香酸Na、サリチル酸Na
・パンテーン ミラクルズ クリスタルスムースシャンプー
・・・クエン酸、安息香酸Na、ポリクオタニウム-6、EDTA-4Na
■LUX
・スーパーリッチ ダメージリペアシャンプー
・・・EDTA-2Na、安息香酸Na、フェノキシエタノール、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル
・ルミニーク ダメージリペアシャンプー
・・・クエン酸、水酸化Na、EDTA-2Na、安息香酸Na、フェノキシエタノール、ソルビン酸K
続いてコンディショナーです。
■資生堂
・バラ園 ローズコンディショナー
・・・イソプロパノール、BG、クエン酸、シリカ、BHT、フェノキシエタノール
・マシェリ モイスチュアコンディショナー
・・・BHT、安息香酸Na、フェノキシエタノール
■花王
・エッセンシャルビューティ コンディショナー モイストリペア
・・・ベンジルアルコール、香料
■カネボウ
・サラ コンディショナー
・・・フェノキシエタノール、安息香酸Na
・クラシエ いち髪 ダメージケアコンディショナー
・・・クエン酸、トコフェロール、ステアルトリモニウムクロリド、フェノキシエタノール、安息香酸Na、メチルパラベン
■P&G
・ハーバルエッセンス コンディショナー(代表)
・・・ベンジルアルコール、ジセチルジモニウムクロリド、イソプロパノール、PG、EDTA−2Na、クエン酸、ヒスチジン、BG、アロエベラ液汁、アルガニアスピノサ核油、変性アルコール、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン
・パンテーン コンディショナー
・・・クエン酸, ヒスチジン, メチルクロロイソチアゾリノン, 塩化Mg, メチルイソチアゾリノン, メチルパラベン
■LUX
・スーパーリッチ ダメージリペアコンディショナー
・・・乳酸、フェノキシエタノール、メチルイソチアゾリノン、メチルクロロイソチアゾリノン
・ルミニーク ダメージリペア&カラーケア コンディショナー
・・・クエン酸、安息香酸Na、フェノキシエタノール
以上ですが、いかがでしょう。
何かに気付きませんか?
赤文字にしたところが、防腐剤といった保存料です。
普通ではない防腐系
疑問の一石を投じましたが、ユーザーの皆さんでも2点のことに気付かれたと思います。
ひとつには、パラベンがほとんど使われていないこと。
特にシャンプーに関しては、皆無ですね。
もうひとつは、「安息香酸Na」や「ソルビン酸K」「ベンジルアルコール」などといった聞き慣れない成分が使われていることです。
安息香酸Naに至っては、全てのメーカーさん揃って使われていますね。
こうして見ていくと、スキンケア化粧品とは全く事情が異なることが分かります。
まずパラベンが使われない理由ですが、これはシャンプー・コンディショナーともに製剤上でイオン性の界面活性剤が多く使われていることから、パラベンの防腐性能が発揮されないケースが多くなるためです。
なぜ発揮されないかは解説が難しいので割愛しますが、簡単にいえば水への溶解性が悪くなると思って頂ければ良いかと思います。
菌は水分のところにはびこりますので、水に対して抗菌性能が発揮されないと意味がなくなるためです。
その点、フェノキシエタノールは界面活性剤に左右されず防腐性能が発揮されますので、採用しているメーカーさんが多いというわけです。
そしてもうひとつの、複数の防腐剤が使われる理由。
これはTwitterでつぶやいたことと繋がりがあり、ポンプ容器は上部から水が入りやすいためです。
つまり、皆さんがお風呂場などに置いていて上からシャワーの水などが掛かると、かなりの確率で菌が入ってしまいますので、どんどん菌が繁殖する状態に対抗しなければならないためです。
髪を洗ったお湯や水、さらに手から流れ落ちたお湯や水は当然のことながら菌がたくさん含まれていますので、となるとこれは防腐剤を相当強力にしておかないと腐ってしまうのですね。
それこそスキンケアアイテムのように、お肌への影響を考えたギリギリの防腐剤量だと、雑菌に対抗できなくなるケースが生じてくるわけです。
これは、厚労省の下部組織であるPMDAが公開している、商品トラブルによる回収事例にも多くみられるのですが、こうしてきちんと防腐力を強化していないマイナーなブランドさんの商品は、結構な件数で菌汚染によるトラブルが発生していることからも分かります。
無添加といったコンセプトの商品は、非常にこのリスクが高まるというわけです。
しっかり洗い流そう
以上、意外とユーザーの皆さんが気付かれていないヘアケアアイテムの防腐剤のお話をしてきましたが、今回とりあげたヘアケア製品に使われている聞き慣れない防腐剤はそのはずで、ヘアケア以外では日本でほとんど使用されない成分です。
それは、やはりお肌への影響力が強いことから、スキンケア化粧品への使用は避けられているわけですね。
ですので、スキンケアアイテムと違って防腐剤による皮膚への影響は強いということになります。
もちろん、最終的には洗い流しますのでほとんどは水で流れ落ちてしまいますが、やはり製剤上では全く残らないとは言えませんので、注意が必要です。
というわけで、シャンプーやコンディショナーが頭皮に残っていたり、お顔に付着すると痒みや紅斑のトラブルを招きやすくなります。
特にコンディショナーはもともとカチオン界面活性剤が必ずといって良いほど使われていますので、イオン的に髪だけでなく頭皮やお顔にも残りやすいことから、しっかりと洗い流すことをオススメします。
そして今回のTwitterでも取り上げたように、ポンプ容器というのは上からたくさん水を掛けると必ず中に入ってしまいます。
これはポンプの構造上の問題で、必ず空気を取り入れる箇所がどこかに作ってあるためです。(空気を取り入れないとポンピングによって負圧になってしまうため)
もちろん容器のメーカーさんや、容器に掛かっているお値段によって入りやすさは異なりますが、基本的には必ず隙間が作ってありますので、中に入ってしまうと考えて間違いありません。
菌が繁殖する問題だけでなく、Twitterの画像でも公開した通り水が入ることで中身が薄まってしまいますので、水が掛からないように十分に注意して使用しましょう。
容器に液や泡が付着しているとザーっとシャワーを掛けたくなりますが、ここはポンプ部分にあまり掛からないよう、丁寧に洗い流すことをオススメして今回の記事を終わりに致します。
ではまた次週。
by.美里 康人