根強い人気のある化粧品成分「ビタミンC」
今週の美里所長さんの「高濃度ビタミンCの乳液・クリームは、なぜないの?」という記事はなかなかに興味深かったです。
が、その記事の中で、ビタミンCが高濃度に配合された粘度の高い製品(乳液やクリームなど)が理由として、
ビタミンC誘導体は安定化させるために『塩(えん)』のカタチにされているから と、サラッと書かれていましたが、
化学が得意じゃない方は、???と感じた方も多いのではないでしょうか?
私自身も、処方やメカニズムについて教えてもらっているときに、
化学の専門知識のある方たちは、アルカリ性物質だと思っているもののことを、塩基性物質と表現したり、
「塩=アルカリ」と理解していいものなのだろうか?、食塩(solt)とは異なるものなのだろうか?などと、過去にモヤモヤした記憶があります。
ということで、本日は、文系脳でも理解できる「塩(えん)」のお話をしてみようと思います。
ますは、書籍『BEAUTY WORD(製品科学用語編)/中央書院刊』より、「塩」の記載部分を引用しますね。
塩(えん)
イギリスの化学者ブレンステッドは、塩とは、「酸とアルカリ(塩基)との反応(中和反応)の結果生じる化合物」と定義しています。表現を変えれば、「塩とは、中和によってできる+イオンと-イオンからなる物質」となります。
例えば、水酸化ナトリウム<苛性ソーダ>(塩基)と塩酸(酸)が中和反応の結果、塩化ナトリウム(塩)が生じます。
これを化学式で表すと、HCl(酸)+NaOH(塩基=アルカリ)→Na+Cl–(塩:エン)+H2O(水)となります。すなわち、水酸化ナトリウムと塩酸が反応して、塩と水になります。この反応は、水が取れて塩素(Cl)とナトリウム(Na)が結合するので、脱水反応ともいいます。
同様にアンモニア(塩基/NH4OH)と塩酸(酸/HCl)から塩化アンモニウム(塩/NH4+Cl–)が、水酸化カリウム(塩基/KOH)と硫酸(酸/H2SO4)から硫酸カリウム(塩/K2+SO4–)などの例があげられます。
この説明を読んで、まず、私が理解したことは、日常生活でなじみ深い食塩(solt)は、化学式で表現すれば塩化ナトリウム(Na+Cl–)なので、
科学の世界の「塩(エン)」ではあるけれど、科学の世界の「塩(エン)」と呼ばれるものの範囲はもっと広く、食塩(solt)以外にも「塩(エン)」と呼ばれるものがたくさん存在しているということでした。
次に、塩(塩)=アルカリが同義語として認識して大丈夫かどうかの疑問ですが、
それを解決するために思い出したいことは、pHのこと。
pHとは、水溶液に含まれている水素イオン濃度指数を数値化したものですというのは、以前にも書いた記憶があるのですが、
酸性やアルカリ性は、その水溶液にどれだけの割合で水素イオンが含まれているかによって決まり
水素イオン濃度が濃いほど酸性になり、少ないほどアルカリ性になります。
さて、上記の引用の中に、「塩とは、中和によってできる+イオンと-イオンからなる物質」という説明にあるとおり、
必ずしも水溶液だけとは限らないので、
塩基とアルカリの定義を図にすると下記のようなイメージになります。
色々と調べてゆくと、
酸とは、水素イオン・H+を与える分子、イオンであり
塩基とは、水素イオン・H+を受け取る分子、イオンであると説明されています。
ちょっとだけでも、アルカリと塩のことが整理されたら嬉しいです!