週3で異なる目線の美容記事をお届け
よく耳にする「医薬部外品」
効果が高い気がするけれど
化粧品とどう違う?
あらためて今回は、「医薬部外品とは何か」について話題にしてみます。
「医薬品」「化粧品」とともにお国の厚労省によって薬機法で取り決めされた分類ですので、きちんと説明するとなるとユーザーさんにとって非常に理解が困難な取り決めなのですが、さほど難しくない範囲でなおかつ正確に解説をしてみようと思います。
チラシ広告やネットを見ていると、医薬部外品製品を「国から承認を受けた」とか「国が認めた」「厚生労働省が認可した」みたいなスペシャリティ感をアピールしてユーザーさんの誤解を誘導する表現が多くみられますので、是正しておきたいと思います。
いわば、「医薬部外品は化粧品よりも効果が高いのか?」という疑問への答えにもなると考えて頂ければよいかと思います。
ざっくりと、医薬部外品とは
最初に非常にざっくりとした表現で医薬部外品とは何かを言葉にすると、こういうことになります。
・医薬品と化粧品との間に位置づけされ、薬品によるある程度の効能・有効性を謳うことが認められた製品
めちゃくちゃ曖昧ですが、この中でもっとも着目すべきポイントは「ある程度の効能・有効性を謳える」というところですね。
化粧品においてはこの配合された薬品による効能や有効性は全く謳うことは認められていませんので、あくまで保湿といったスキンケア効果しかアピールできないことは、皆さんもご存じのことでしょう。
ですので、化粧品では効果を謳えなかったことが医薬部外品ならば、「美白」や「炎症を防ぐ」「ニキビを防ぐ」といった医薬品的な予防効果が、少し謳える製品であるということになります。
--ということは、やっぱり医薬部外品は化粧品より優れてるんじゃん!
と、早合点はいけません。
この部分をもう少し掘り下げていきましょう。
決してそうとは言えない部分も見えてきます。
「国が認めた」とはどういう意味か
最近、こういった表現でPRをする医薬部外品アイテムをよく目にしますね。
ユーザーの皆さんもよく目にするということは、一応広告表現的には違反や指導対象にはなっていません。
その理由は、「その通りだから」です。
--ならば、いいんじゃないの?
確かに事実ですし、誇張表現というわけではないので、お咎めなしの判断をせざるを得ないのが薬務課の立場です。
でも日本語って、「含みを持たせる」や「印象操作」といった、ズル賢い利用ができる曖昧表現の多い言語でして、このケースはまさにこれを利用した宣伝手法です。
消費者の方の深層心理を分析すれば、この文章を見た人の第一印象は「この製品は国から特別に認可を受けた優秀な製品」というイメージを思い起こさせ、販売者側はこれを意図的に誘導しているんですね。
逆説効果としてもっといえば、こういったことを記載されていない他社の製品は、このような認可を受けていないかのようなイメージ付けをしているわけです。
むろん、医薬部外品製品は化粧品のように地方自治体の薬務課に届け出さえ出せば製品を製造できるわけではなく、きちんと厚労省の下部組織機関に申請書を提出し、しかも承認を受けなければ製造できません。
つまりこういうことです。
化粧品の場合)
都道府県の薬務課に製品名称の届け出を提出するだけで、即日的に製品を作れる。
医薬部外品)
厚労省に審査の申請をした上で、厳格な審査を受けて承認が得られてから製品が作れるようになる。 またその審査期間はおよそ半年程度がメドとされる。
確かに最初に書いた通り、販売PRで見かける文言通りということが分かります。
しかしながらこの手続き上の問題は、医薬部外品がシビアで品質の高い製品だからこうなったというわけではなく、もともとは化粧品も同様の手続きを踏まねばならなかったのが、業界の繁栄のために手続きを簡略化するために緩和措置が取られたことから、化粧品は簡単になったというだけです。
つまり、お国の組織である厚労省は医薬品の方で手がいっぱいなので、人体に影響を及ぼす事例の少ない化粧品だけでも、地方自治体の判断で運用しようという配慮から簡略化されただけのことですね。
ですので、何も医薬部外品が特別視されるような製品というわけではありません
言い方を変えれば、化粧品の方は製造する工場やメーカーが自分たちで責任を持って、自主的に運用して下さいね、ということです。
まぁ、ざっくりとした説明ですので少し乱暴な説明ではありますが、意味合いとしてはこういうことになります。
実際、厚労省にとってめんどくさいこの制度はもともと日本にしかありませんし、実はもう10年も前から廃止の検討がなされていて、近い将来に廃止される可能性もあると言われています。
医薬部外品はスキンケア製品だけではない
さて、医薬部外品製品は化粧品よりも品質的に上位にある素晴らしい製品との認識を少しでもお持ちのユーザーの皆さんを、最初に驚かせましょう。
以下に、厚労省において定められた医薬部外品というカテゴリーに区分されている製品のリストをあげておきます。
リストを見ていくと「え?こんな製品が??」と、きっと驚かれることでしょう。
こんな製品も医薬部外品なんです。
・殺虫剤
・染毛剤(ヘアカラー)
・パーマ液
・衛生コットン
・生理用品
・入浴剤
・歯みがき
・殺鼠剤(ねずみの駆除剤)
・コンタクトレンズの消毒液
殺虫剤や生理用品、そして歯みがきなんかもかなり雑貨ぽいお安い製品ですし、ちょっと医薬部外品の価値観にかげりが出てきませんでしたか?
ちなみに、あの蚊取り線香も医薬部外品です。
これらと、美白やニキビアイテムといった美容業界では高価そうな製品とは、似ても似つかず共通要素もみつからないですよね。
こうなってくると、どこに医薬部外品というカテゴリーの製品に線引きがあるのか、きちんと知っておく必要がありそうです。
「薬剤」がキーワード
こうして国によって医薬部外品に指定された製品群をみていくと、ひとつのキーワードでくくられていることに気付くかと思います。
それは、何かの有効性を持たせるための「薬剤」が必ずといってよいほど配合されている、そしてそれがその製品の特長である点ですね。
ですので、医薬部外品は何もお肌に使用する特別な製品というわけではないことが分かります。
さらにここで大切なのは、その薬剤の使用の仕方を誤ると、人体に影響を及ぼす可能性があるという点です。
分かりやすい製品でもう少し掘り下げて解説してみます。
<殺虫剤>
製品特長:虫を殺すための製品
薬剤:虫を殺す薬剤
<歯みがき>
製品特長:口中(特に歯周辺)を清潔にする
薬剤:口中の歯周辺を洗浄して除菌し、清潔に保つ
これでユーザーの皆さんも少し謎がほころんできたのではないでしょうか。
他の製品をみていっても同様に理解ができると思います。
お肌に使用する化粧品の部類に入るものも、同じです。
<パーマ液>
製品特長:髪をゆがめてウェーブをつけて固定する
薬剤:毛の組織を薬剤で一度壊し、ウェーブをつけた後に再度もとに戻す
こうして解読していくと、スキンケアの部門で指定されている医薬部外品製品にも同じことがみえてきます。
<美白製品>
製品特長:皮膚のメラニン生成を抑制する
薬剤:メラニンの生成を抑えるため、生成プロセスの過程をカットする
<ニキビ防止>
製品特長:ニキビの発生を防止する
薬剤:アクネ菌に対処して清潔にする
<肌荒れ防止製品>
製品特長:肌荒れ症状(赤味・ムズムズ感など)を改善する
薬剤:肌荒れ症状に至る前に原因に対処する
化粧品より効くのは間違いないのか
ここまで説明を進めてきましたが、となると化粧品よりも効果が高いという概念は間違いないように感じるかもしれませんね。
確かに、一部の製品においてそれは正しいと言えるでしょう。
いや、「正しい」と言い切るのは誤解がありますね。
「正しい可能性を秘めている」というのが、正確でしょう。
あくまで可能性であって、ほかの製品よりも優れているかどうかはまた別問題ですから。
で、そういった可能性に期待できる一部の製品とは、以下のケースです。
・メーカーが独自で薬剤を開発して有効性のデータを採取し、唯一無二の薬剤を使った独自製品
--ということは、そうではない製品は効果が期待できないの?
こういった疑問も出てくることでしょう。
必ずしもそうとは言い切れませんが、製品のPRに使われているドラマティックな言葉には、過度に期待しないのがよいかもしれません。
ここの謎を解いておきましょう。
「薬剤」は汎用のモノが大多数
上の項では、「メーカーが独自開発」と説明しました。
ここが大事なキーワードで、実は化粧品業界で上から名を連ねる大手ブランドにしか、これを達成できる資金力と開発力はありません。
この大手ブランドとは、まさにトップから数えて4~5社と言ってしまって間違いありません。
医薬品会社で例えると分かりやすく、「ジェネリックではない、新薬の開発が可能な医薬品メーカー」というのとかなり似ています。
それは、この薬剤の開発には百億円レベルでの資金力が必要だからです。
下世話なお話ですが、百億の資金力ですから、年間の売り上げが百億円レベルでは全然足りませんね。
軽くその10倍は売り上げがないとここに資金投入できませんので、そうなると4・5社というのは納得がいくかと思います。
あまり発言の影響が及ばない外資のスキンケアブランドで言いますと、エスティローダーあたりが可能性の範疇でしょうか。
いくら認知度が高くても、これ以下の資金力では到底及びません。
ヘアケアブランドで言えばロレアル、トイレタリーブランドで言うとユニリーバ・P&G・ジョンソンエンドジョンソンあたりまでが手の届く範囲というイメージです。
もちろん、資金力はあったところで、売れるかどうかも分からない先行投資にそこまでやる気はないブランドさんもたくさんあります。
--はぁ? うんと知名度の薄い化粧品メーカーさんが、たくさんの医薬部外品製品を出してますよ?
ここの解明で、今回の話題は締めくくりになります。
上で、医薬品会社の「ジェネリック」という考え方に触れました。
これと似たような考え方で、私たち中小がプロデュースするスキンケア製品の医薬部外品に配合する薬剤には、ジェネリックのようにその薬剤を開発した原料メーカーさんが広く使えるように販売されている「汎用薬剤」というのがあります。
殺虫剤や歯みがき・蚊取り線香なども、ひとつの薬剤がかなりのメーカーさん・製品に多用されています。
そして、スキンケアアイテムでもっとも広く使用されている医薬部外品向けの代表薬剤が、きっと皆さんも目にしたことがあるはずの「グリチルリチン酸2K」になります。
これは敏感肌向けの炎症を防止する効果が厚労省に認められた薬剤で長い歴史があり、それこそこの薬剤はどこの化粧品メーカーでも使用することが可能で、広く中小のメーカーさんにも活用されています。
つまり、この薬剤をスキンケア製品に配合して厚労省に申請さえすれば、「肌荒れを防ぐ」という効能が謳うことができる医薬部外品製品の審査が通るということです。
はい、一番最初に戻れば謎が解けましたね。
【厚労省に認可を受けた製品】
このPR文言のキーワードの意味が、ココにあったというわけです。
これで意味が理解できたかと思います。
--な~んだ。 ”そのメーカーさん“が認可を受けたわけではないのね?
いや、まぁ薬剤の認可を受けたのは薬剤メーカーさんですが、配合した個々の製品を申請して認可を受けたのは製品のメーカーさんですので、あながちウソというわけではありません。
とはいえ、私たちも医薬部外品製品のプロデュースするケースがありますが、こういった過激なPR文言は避けて頂くようアドバイスさせて頂いていますね。
今どきは、ヘタをすると化粧品の企画を担っている方々よりユーザーさんの方が賢明ということもよくあり、むしろ逆効果にもなり兼ねないと思っておかれると良いかと思います。
こうして医薬部外品として使用が認められた汎用の薬剤は何十種類もあり、美白を謳える成分としてはビタミンC誘導体が有名ですね。
さて、これで話題は終わりではありません。
というのも最後に記しておかないといけないのは、こういったジェネリック的な薬剤は普通に化粧品の成分としてINCIに登録されていることが多く、医薬部外品製品ではなくてもフツーに化粧品に配合されている、という点です。
先ほど例あげた「グリチルリチン酸2K」やビタミンC誘導体などは典型的な例で、お手持ちの市販化粧水の全成分をみればかなりの確率で配合されているのがみてとれます。
しかもここまで述べてきたように、医薬部外品は薬剤として厚労省に認可を受けていますので、配合量もきちんと厚労省に認可を受けた%を守らないといけません。
勝手に増やすこともできませんし、減らすことも許されません。
一方で化粧品の場合は、特に成分に限度が設けられていなければ制限がなく、成分によってはメーカーさんの責任において何%でも高濃度で配合することができるという、反対の現象がよくみられます。
もちろん、配合量が多いから効果が高いと言い切ってはいけませんが、ユーザーさんにとっての期待度からすると、ちょっと訴求力に疑問が生じるのはおかしなお話ということになりますね。
メーカーさんから指摘を受けないか、少々ビビりながらその最たる例を示して終わりにしようと思います。
多くは書きません。
<美白アイテム>
効果:メラニンの生成抑制
薬剤:プラセンタ
指定配合量:1%
これは実は私自身も30年以上前に使ったことがある承認薬剤ですが、いまもまだ認可の前例は生き残っているようです。
美容液として今では原液も普通にネットで販売されていますし、1%の配合で美白医薬部外品と言われても疑問を感じざるを得ないのは、当然と言えます。
もちろん、使われているプラセンタが独自開発で特殊な素材である可能性もゼロとは言えず、必ずしも言い切ることはできませんが。
とはいえ、誤解なきよう。
全ての中小ブランドの医薬部外品製品がこういう現実というのではありませんし、炎症防止やニキビ薬剤で本当に有効性が期待できるジェネリック的な製品もたくさんあります。
そこは見極めが必要ということだけ記して、今回の話題を終わりたいと思います。
まぁ、あまり誇大に効果をアピールしている製品は、一度成分をよく調べてみることが大切ということで、締めておきましょう。
ではまた次週。
by.美里 康人