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洗顔の基礎知識

洗顔の基礎知識

美里康人

洗顔料は、みなさんご存知のように、お顔に残っている皮脂や汚れ、そしてクレンジングで残った油分などを取り除き、なおかつ毛穴に潜む微生物等を排除することを目的としています。
では主にはどういった成分で構成されているのでしょうか?
まず洗顔料もいくつかのタイプに分けることができ、当然それぞれに主だった構成成分に違いがありますので、タイプ毎にみていきましょう。

石鹸タイプの洗顔料

まず、もっとも市場に多いタイプの洗顔料のお話をします。
石鹸は、市場のほとんどを占める一番オーソドックスなタイプです。
石鹸というと固形セッケンという認識があると思いますが、油脂を中和する際のアルカリを変えることで、実は様々な状態の石鹸ができます。
そのどれもが「石鹸」と呼ばれます。

洗顔クリーム・液体ソープも全て同じ石鹸の仲間です。
”えっ?クリームなのに石鹸?”と思う方もおられるかもしれませんが、化粧品メーカーから販売されているチューブに入ったクリーム洗顔も、同じ仲間の石鹸です。
その成分的な違いを下記に示します。

固形石鹸 クリーム洗顔 液体洗顔
使用する油脂 動物油・植物油*1 脂肪酸 ヤシ油脂肪酸
アルカリ 水酸化ナトリウム 水酸化カリウム*2
水分量 少量 半分~2/3 85%以上
他の成分の配合 なし~微量の油分*3 グリセリン他保湿剤など*4

*1 家庭では廃油を使用したり、市販品メーカーによっては脂肪酸を使うこともある。
*2 他にもアミノ酸のL-アルギニンや、AMP・TEAなどの有機アルカリが使われる。
*3 メーカーによっては副産物のグリセリンを意図的にいくらか残してプレミアムとしている場合もある。
 他には植物油を練りこんだり、エキスを添加して差別化を図っている商品もある。
*4 一般的に化粧品に配合されるエキスや保湿剤・防腐剤、石鹸カスを解消するための界面活性剤などが配合される。

この表を見ても分かるように、固形石鹸と一般的な洗顔クリームは、水分量と使用する油脂・添加剤に大きな違いがあります。

もう少しこの違いについて分かりやすく説明します。

まず、油脂について、固形石鹸を作る際に使う植物油などの油脂は、反応時に副産物としてグリセリンが生成されます。
油脂(植物油など)と呼ばれる素材は、有機化学の世界では脂肪酸にグリセリン基が3個ついた「トリグリセライド」と呼ばれます。
対して洗顔クリームの場合は、油脂からグリセリン基を取り外して精製しておいた「脂肪酸」を使用します。

洗顔クリームに油脂を使わず脂肪酸を使用するのには、幾つかの理由があります。

理由
  1. 商品によって脂肪酸の種類や量を自由にバランスして好みの硬さ・使用感・洗浄性・泡立ちなどを調整できるため。
  2. 天然の油脂に不純物として含まれている不飽和脂肪酸や分岐状脂肪酸など、皮膚に良くない油分を避けることができるため。
  3. 純粋な成分で構成されるために、脂肪酸とアルカリとの中和率を的確に計算でき、調整できるため。
主に洗顔クリームに使われる脂肪酸は、「ミリスチン酸」「ステアリン酸」「ラウリン酸」の3種類です。
その性質は、下表のとおりです。

ラウリン酸 ミリスチン酸 ステアリン酸
洗浄性 1 2 3
皮膚への安全性 3 2 1
泡立ち 1 2 3
泡のクリーミィ度 3 2 1
肌のしっとり感 3 2 1
製品の硬さ 3 2 1

お肌の洗浄剤として中間的なのがミリスチン酸で、もっとも多量に使用されます。

他にも中和に使用されるアルカリ剤(水酸化カリウム)の量を調整することで、硬さ・使用感を調整することができます。

水分量に関しては、表の通りかなりの量の違いがあり、石鹸純度が違うということに繋がります。最後に添加剤の違いも大きく、主に使われる添加剤を列記しておきます。

・保湿剤:グリセリン・BG・ベタイン・糖類・ヒアルロン酸などなど
・防腐剤:パラベン・フェノキシエタノール・安息香酸などなど
・効果成分:消炎成分・美白成分・皮膚保護成分・植物エキス類などなど
・他に香料・色素・金属封鎖剤・スクラブ剤などが配合された商品が上市されています。

界面活性剤タイプの洗顔料

相変わらず市況の大半を占める石鹸タイプに対して、昨今はよりお肌に安心で生分解性も追求した界面活性剤使用の洗顔クリームや液体ソープが増えてきています。

過去において、界面活性剤を使った洗顔クリームがほとんど存在しなかったのは、界面活性剤の性質として温度により形態の変化・安定性など様々な影響を受けるため、製剤化が難しいことが主な要因でした。
一部には液体ソープや液状クレンジング・洗顔パウダーで市販されたものもありましたが、やはり薄い・使いにくいといった感は否めなく、市場開拓には至りませんでした。

では、現在どういった界面活性剤が洗顔クリームに使われているのか簡単に説明していきます。

現在、市場にはアミノ酸系界面活性剤を使った洗顔クリームが増えてきています。

字の如く、アミノ酸に脂肪酸とアルカリを合成した物で、生分解・生体への安全性に優れています。

性能的には、石鹸に比べて泡立ちが少し劣る・洗浄力が少し弱い・皮膚にぬるつきが残りやすい・原料臭が強いなどのデメリットがありますが、現状は製剤化技術でこれらの問題はかなり改善されてきています。

ただし、価格的には石鹸に比較するとまだまだ原料が高価なので、濃度の濃い洗顔クリームの場合、コンビニコスメ・トイレタリーブランドではなかなか市販は実現しないようです。
比較的安価に手に入るのは、低刺激性ベビー用ボディーシャンプーなどにみられるポンプ式の液状ソープで、濃度が薄い分低価格で市販されています。

一般的に全成分中に「○○グルタミン酸○○」「○○グリシン○○」といった名称の付いた成分が主成分となっているのが特徴です。

ここで注意が必要なのは、昨今のアミノ酸ブームに乗せて、今までの石鹸タイプの洗顔クリームに少しだけアミノ酸系の界面活性剤を配合したり、アミノ酸そのものをごく微量配合するだけで『アミノ酸系の洗顔クリームです』と、堂々と謳っている中小メーカーが多くなっていることです。

ポイントは、全成分中に上記に掲げた成分が2~3番目で配置されているアイテムをみつけるのが選択のコツです。

なお、2005年を迎えて新しいアミノ酸系洗浄剤の登場で、市場にも安価なアミノ酸系の洗顔クリームが登場し始めています。