美里康人
対して化粧水や美容液は比較的ごまかしが利き易く、みかけや使用感では判断がし難いアイテムです。
ただそれだけに、独自の個性を出して他社のアイテムと差を付けるためには、それなりの技術を要するのもまた事実で、お肌の基礎作りをしてくれるのもこのアイテムですから、役目は非常に重要です。
それだけにしっかり判断ツールを頭に入れてお気に入りをみつけて頂きたいところです。
化粧水もいくつかタイプに分けて説明します。
完全水系タイプの化粧水
これは、水に溶ける保湿剤やエキス等だけで構成されたタイプの化粧水です。
家庭で手作りもされているように、比較的処方構築も簡単で、使用感ではユーザーが差を見分けにくいタイプです。
それを利用して、簡単な保湿剤や何種類ものエキスをズラズラと並べ立てただけなのに、何千円も何万円もの価格でユーザーを欺いているメーカーやアイテムが市場にたくさん存在しています。
今は全成分でそれを簡単に判断できますので、決して騙されないようにふるいにかけていきましょう。
成分としては主だったところでは、
・基材としての水・エタノール
・保湿剤としてのグリセリン・BG・DPG・ベタインなど
・防腐剤としてのパラベン・フェノキシエタノール・ペンチレングリコール
・そして数種のエキスで構成されています。
ここまでであれば、それこそ家庭で簡単にエキスを配合して自分で作ることができてしまいます。
この程度であれば100均化粧品で充分と言えるでしょう。
ただこのタイプは浸透性に難があり、インナードライを防いだり、成分を角質層の奥に届けたいという要望は叶えられません。
せめて界面活性剤などで、皮膚表面において化粧水がはじいてしまわないように工夫位はされていなければなりません。
界面活性剤配合タイプの化粧水
これは水系のタイプにさらに浸透性を上げようといういう工夫がなされているタイプの化粧水です。
水系の場合は、皮膚表面に存在する皮脂や石鹸カスに対して表面張力が働いて角質層の内部まで浸透し難いのですが、界面活性剤によりそれを助けてあげようという技術です。
界面活性剤といえば、その言葉だけで非難する声を多くみかけますが、医薬用にも使われている素材や天然系の界面活性剤(シュガーエステルや水添レシチンなど)を使って安全面も重視しているメーカーが多くなっています。
界面活性剤という素材の意味や、勝手に「化学合成で作られていて危ない」などの妄想を膨らませて、除外してしまうのは早合点というものです。
確かに皮膚への安全性を考えた時、”この界面活性剤の選択はよくない”と、思わずにいられないメーカーも未だに存在します。
そういうメーカーは選択肢から排除していきましょう。
安全な界面活性剤の代表は、「○○酸スクロース」「PEG-○○水添ヒマシ油」「水添レシチン」「○○ポリグリセリル」という表示名称になっています。
油分・界面活性剤配合タイプの化粧水
この場合は、水性の保湿剤だけでなく、油分を併用することで皮膚にバランスよく、しかも保湿を長持ちさせてインナードライへの解消にまで工夫が凝らされたタイプです。
外観としては透明だけでなく、白濁・二層などいくつか見受けることができます。
もちろん油は水に溶けないので、界面活性剤も配合されていることがほとんどと考えて良いでしょう。
このタイプは安定に油分を水の中に保持しておく事が難しいため、製剤技術が問われることになります。
そのためこのタイプが上市されているメーカーは、技術力もいくらか先進的であると判断することができます。
高分子配合(トロミ)タイプの化粧水
この場合は、必ず高分子と呼ばれる増粘剤が配合されています。ここでも「高分子=ポリマー=ビニールみたいなモノ」と勝手に妄想を膨らませて、バッシングをする風習があちこちで見られます。
もともと化粧品に配合されるポリマーの量は、1%にも満たない程度しか配合されていません。
それだけで十分に粘性を出すことができるからです。
そして高分子であるだけに、皮膚の内面に浸透することもあり得ません。
さらにビニールやプラスチックのように皮膚を覆ってしまって、皮膚呼吸すらも妨げてしまうと考えるのもまた極端な発想で、化粧品に使われるポリマーで皮膚を覆ってしまう可能性があるのは、ピールオフタイプのパック(毛穴すっきりパックなど)くらいのものと考えて良いでしょう。
普通は空気や水・油が行き来する網目状の皮膜を連想するのがより正確と言えます。
また皮膚を外的要因から保護する性質をもったポリマーも多くなってきています。
ただ、理想的にはこの皮膜が皮膚を保護する役目を果たさない素材である場合においては、できる限り少量であるに越したことはありません。
以上が市場にある化粧水の剤型別分類ですが、このいくつかを組み合わせたタイプも存在しています。
現在、化粧水の市場は、インナーへの保湿が技術的な進歩のカギと言われています。
グリセリンやベタインなどでは表面的な保湿は得られたとしても、角質層の深部へ潤いを与えることはできません。
もちろん持続性も期待できません。
それを補うために乳液やクリームでフタをするという考え方もありますが、これもよりインナーまで潤ってくるのを待つには時間がかかりますし、意外と外的要因によって落とされてしまうことが多いと考えて良いでしょう。
昨今はナイトクリームの使用など、寝る前のケアに違和感を感じる世代が多くなっています。
そのためにも基礎の化粧水でインナードライを解消できることが一番の課題と言えるでしょう。
- ベタつかず、インナー対策が期待できる新しい水溶性保湿剤の選択
- インナーに皮脂に類似した油分の補給を行う技術
- より安全に、より奥に浸透させるための素材・技術開発
全成分からこれらを読み取ることが、いい化粧水の選択をするテクニックのカギとなります。